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15. 6

(蒼佑が店に来てるよ!) それから、ほんの数日後だった。 その日は完全にオフの日で、1日家でゆっくり 過ごし、夜になってテレビを見ながら一人で インスタントラーメンなんて食べてた時だった。 居酒屋のバイトに出てたルミから、興奮した声で 電話が来た。 「はっ!?」 (写真見せてくれたじゃん! テーブルに案内したお客さんどっかで見たこと あるなって思って、考えてみたら蒼佑じゃんって! 今から急いで店に来なよ!) 「う、嘘でしょ?」 (もう1時間くらい経ってるし、いつ帰っちゃうか 分かんないよ!来るなら急いで!) バイト中のルミは早々に電話を切ってしまった。 俺は電話を握ったまましばらく呆然と 冷めていくラーメンを見つめた。 ー 嘘だろ……!? 似てるだけじゃないか? ルミにはあの日酔った勢いで何枚か蒼佑の 写真を見せた。 でもそれだけで、覚えているだろうか? 息苦しくなるような動悸を感じて立ち上がった。 自分の部屋に戻って、空っぽの頭のまま着替えを 始めた。 別人じゃなかったとして… どんな顔して蒼佑に会ったらいいんだ! あんなに会いたいと望んでいたのに イザとなったら怖くてたまらない。 忘れられてたら?無視されたらどうしよう。。 着替えて部屋にうずくまった。 勇気を出さなきゃ… 無視されても、冷たい言葉をぶつけられても…。 一言だけでも謝りたい。 それだけでいい! 俺は自分の頬を何度かバシバシ叩いて 家を飛び出した。 バイト先は電車で3駅ほど、15分程度電車に 乗れば着く。駅からは徒歩5分。。 早足で店に入るとすぐにルミが俺に気づいて 駆け寄ってきた。 「遅いよ!ついさっき帰っちゃった!」 「え、マジで!?」 ルミはポケットから携帯を出して 写真を見せてくる。 「隠れて撮ってるからちゃんと 撮れなかったけど…」 見せられたのは、穏やかな顔で談笑する。 男性の写真だった。 「あ……たしかに…そっくり」 俺は食い入るように携帯を見つめた。 店内も暗いし、ピンぼけの写真では、いまいち 確信が持てなかったけれど、そこに写っている 男性は蒼佑に本当に良く似ていた。

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