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「どうしたらいいと思う?」
深く考えずに、そんな言葉をこぼした。
「~~う~ん…」
正直ルミの回答なんてどうでも良かったのに
ルミは首をかしげて真剣に考え込んでくれる。
「まぁ無理して忘れる必要もないし
流れに身をまかせればいいじゃん?」
「流れ……」
「そっ。声が聞きたくなったら電話すんの
会いたくなったら、会いたいって言うの
美味しいハンバーグ屋見つけたら、今度
一緒に行こって言うの」
「もう会わないって言われたのに…
そんな事してたらストーカーじゃん?
キモくない?」
俺はルミの言葉を冗談だと受け取って笑った。
「本当に会いたくないなら電話も出ないでしょ
それならそれが答えでいいじゃん
キモいとかストーカーとか蒼佑が決める事だし
お前とは遊びだ、なんて平気で言うんだから
きっと、キモかったらキモいって はっきり
言ってくれるよ。
櫂が櫂の気持ちを押さえるのは、その時で
いいと思うけど」
「 そうかなぁ」
「私も言ってやるよ
ヤバそうだったら、ぶん殴って目を醒まさせて
あげるからさ」
「……ルミ本気でぶん殴りそう」
殴るよ~!とルミが手をグーにして
ボクサーのような素振りをして
二人でケラケラと笑った。
「あ、言っとくけど、私は別に蒼佑との関係を
応援してるわけじゃないよ。
蒼佑の意見に賛成。
本当は櫂が別の誰かと、自然に幸せな恋愛が
できるのが一番いいと思ってる。
私とか?」
ルミは小首をかしげて誘うように笑って見せた。
「そうだな…俺もそれが一番幸せだろうと思う」
俺は窓の外を眺めて言った。
雑居ビルの2階にあるこのファミレスからは
駅に向かって歩く人の流れが多く見える。
露出度の高い服を着た女性2人組が手を繋いで
楽しそうに歩いている様子をなんとなく目で追った。
二人は別に同姓愛者ではないだろう。
飲んでテンションが上がって盛り上がっただけの
行動だろうけど、あんな風に回りを気にせず
何も考えず、手をとって歩ける事が羨ましい。
俺と蒼佑が同性じゃなければ、この気持ちも
ルミの言うようにもう少しシンプルだったかも
しれない。
そんな事をボンヤリ思った。
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