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第一印象

今回仕事を受けたドラマは、ボーイズラブという類のものらしい。 しかし恋愛とは言っても、今回のはアクションの激しい殺伐としたものでもある。 警視庁刑事部捜査一課の刑事2人の物語。 様々な事件を解決していく中でのラブストーリーだそうだ。 俺の役は正義感の強いエリート刑事。 両親が殺害された事をきっかけに、そちらの道に足を踏み入れる。 一方雪永 千里の役は俺の役の部下で、普段はおっとりしているがキレると別人のように荒々しくなる役らしい。 俺が見た限り、彼のそういった芝居は見たことがなかった。 松尾もないと言っていたし、もしかしたら初めての試みなのかもしれない。 監督も思い切った事をしたものだ。 今日は撮影スタジオ内での顔合わせだ。 プロデューサー、脚本家以下、各パートのオールスタッフ、オールキャストが一堂に会し番組の狙いや意気込みを伝え、お互いに人物紹介をして、いよいよ撮影開始となる。 前の仕事が早くに終わったので、少し早めに部屋に入った。 お目当ての雪永 千里は……まだ来ていないようだ。 「おう、幸。早く来るとか珍しいじゃん」 入って早々話しかけてきたのは、かれこれこの業界で10年の付き合いはある間瀬(ませ) (いつき)。 年は近く、27の俺に対しこいつは1つ上だ。 性格はかなり面倒くさいところはあるものの、役者としての技量は認めている。 こいつは確か、俺の同僚にあたる役だったか。 今までにもそれと似た立ち位置のものが多い。

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