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第一印象2

「ほんとお前ってマイペースだもんな。松尾さんに同情するよ」 「お前だって大概だろ」 ニシシと無邪気な笑みで肩を組んでくる樹を幸はジト目で睨みつける。 人当たりがよく明るい樹は、周りから好かれる人間だ。 一匹狼の幸にとって、数少ない友人(樹が一方的に絡んでくるだけだが)でもある。 そうしていると、人も集まってきて大体席が埋まってきた。 指定の時間まで残り3分となった頃、ガチャリと何度目かの扉の開く音に視線を向ける。 わたわたと中に入ってきた彼、雪永千里は、中に何が入っているのか疑問に思うほど大きなリュックを背負い(寧ろ背負われている気もする)ひょこっと頭を下げた。 「お、遅くなってすみません…っ。あ、雪永です。初めまして…」 その挙動不審ぶりに、次にはドッと笑いが起きた。 彼は「名乗らなくても知ってるよ、有名人っ」「まだ時間過ぎてないよ〜」などと声をかけられて、更にわたわたし始める。 素の彼を見るのは初めてだが、もっと凛としてしっかりとした子かと思っていた。 しかし役の時はハキハキとしていた口調が、今はおどおどと自信なさげな話し方をしている。 こんな調子で今回のような役をこなせるのだろうか。 迫力のある役は、ただ凄みをつければいいとかそういった問題ではない。 それらを完全に自分の中でインプットして、ものにする必要があるのだ。 そうしなければ表面ばかりを取り繕った形になり、根本が見えなくなってしまう。 お手並み拝見、ってところだな。 そう心の中で呟き、ぺこぺこ頭を下げながら席に着く彼を見つめていた。

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