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ハーブティー5

トテトテとキッチンへ向かう千里に、なんとなく着いていく。 彼はハーブを洗うと、手のひらに1つ、2つと掴んでガラス製のポットに入れ、沸騰したお湯を注いだ。 「よし。あとは、少しの間蒸らすだけで出来上がりです」 「すぐだな」 「はい。楽なんです」 何故かグッと親指を立てる千里に、取り敢えず頷いておく。 「ハーブから少しずつ色が出る様子を眺めてるのって、楽しいんです。なんか、ゆったりできるというか」 「そんなものか?」 「はい、心がほっこりしますよ。じゃあ移動しましょうか」 ローテーブルまで戻ってくると、千里は透明なガラス製のポットを置いた。 カーペットの上に座り彼を真似てハーブを眺めた。 確かに見ていて飽きない。 視線を正面に移せば、頬杖をつく千里がいた。 眼鏡が押し上がって可笑しなことになっているが、俺はハーブよりもそちらに目を奪われる。 胸のあたりが熱くて、鼓動が早まった。 「よし、もうそろそろいいかな」 そう言って身を乗り出した千里は、用意していたカップにハーブティを淹れていく。 漂ってくる香りは確かにスパイシーで、ピリッとした感じが伝わってきた。 「このハーブは血行促進作用で冷え性の改善に有効なんです。他にも更年期障害とか、月経前症候群とか、胃腸のトラブルにも効きますよ」 「俺には何一つ当てはまらないな」 「まぁ今の時期寒いですし。ちょっと苦味のある味ですけど、大丈夫ですか?」 「辛くはないのか」 「あ、幸さんって辛いの好きなんだ。じゃあ今度スパイスティー作っ…」 そこまで言った千里が動きを止める。 そして次には自分が口走っていた内容に顔を真っ赤に染めていた。 本当にこいつは、見ていて飽きない。 「あ、いや、その…おれは、ただ…っ」 「3日後」 「……え?」 「3日後なら夜7時以降に来れる」 それにジッと俺を見つめていた千里だったが、やがてそっと淹れ終わったハーブティを両手で持ち、視線を落とした。 何かを考えてるような様子だが、千里のマイペースさには慣れて来たので声はかけずにハーブティを口に含む。 ほんのりと苦味があるが、鼻から抜けるスパイシー感はやはりいい。 あぁ。そういえばスパイスティーがどうのって言ってたな。 「スパイスティーって、何が必要なんだ?今度買ってくる」 「え?」 話しかけると何かを考え込んでいた千里はきょとんとしたが、次にはハッと我に返る。 「あ、あぁ…、えと、オーソドックスなのはシナモンですね。りんごと相性が良いから、りんごのお菓子をお供にするのがおススメ……って、え?買ってくる?」 「また来る。文句あるか」 「な、ないですないです…!」 顔をブンブンと横に振る千里。 そんな彼の様子に、俺は少し口元を緩めた。

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