27 / 108
ハーブティー4
千里の目が文字通り点になる。
そんな相手の言葉を、俺は黙って待った。
「ハーブティ飲む為にここに?」
「ああ」
「折角の休みなのに?」
「ああ」
「ハーブティ飲む為に?」
「それ2度目だぞ」
今度はその目を見開いて、口もポカンと開けて呆然としている千里。
その間抜け面に可笑しくなる。
5秒ほど経ってからやっと動き出した彼は、「い、今準備します…!」と躓きながら部屋の奥に向かって行った。
「おい、ハーブ置いてってるぞ」
「あ!」
動揺する千里。
引きこもりだと言っていたから、こんなことには不慣れなのかもしれないな。
あぁ、ずっと見ていたい。
「わぁ、これアンジェリカルートだ。飲んでみたことなかったんですよね」
「一目見て分かるのか」
「ハーブのいろいろな本、何回も読んでますから」
「へぇ。…なんでそんなにハーブを?」
何の気なしに尋ねた質問だったが、
彼はピタッと手の動きを止め、黙り込んでしまった。
不思議に思って声をかけようとすれば、彼が顔を上げ笑みを浮かべる。
「身近に、ハーブが好きな人がいたので」
「…そうか」
言いながら取り出したハーブは、白く小さな花がいくつも密集する一見弱々しいハーブだ。
何故これにしたのかは、店員にスパイシーな香りがすると聞いたから。
説明を聞いて即これにすると言った俺に、
間瀬は「お前ほんと辛いの好きな」と笑っていた。
余計なお世話だ。
ともだちにシェアしよう!