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二、さざ波の声③
「良かった!ご無事だったんですね!」
飛行場に帰還されましたか。
燃料は大丈夫でしたか。
皆は。
生きていますか。元気ですか。
出撃命令は下ってませんか。
「俺はッ」
喉の奥がすり潰されるように痛い。
「あなたに死んでほしくない!」
俺はッ
「あなたにした事を間違っているとは思わない!」
……俺の頬は、厚い胸板に受け止められていた。
強く、強く。
ぎゅうっと。
両腕が強く、俺を抱きしめている。
(先生?)
あなたが今、どんな顔をしているのか。
俺には見えない。
恨んでいる?
それとも、呆れているだろうか。
「私はね……」
懐かしい。
少し端の掠れた低音だ。ほんの数時間前に無線で聞いた声なのに、幾年も待ちわびていたかのように、耳に馴染む。
俺を叱る声でも、恨む声でも構わない。
あなたの声だから……
もう聞く事はないと諦めていた、あなたの声だから……
「その人じゃない」
えっ…………
見上げたくても、頬を胸に押しつけられて顔を上げる事ができない。
あなたの腕が俺を拘束している。
(あなたの声を聞き間違えるわけない!)
あなたは…………
「先生」
「違う」
言葉は冷酷だ。
「君は誰かと勘違いしている」
私は、ゼスカ
「ゼスカ・ロイウェル」
堕ちる太陽の光が瞳の中で燃えていた。
「人違いだ」
冷たい太陽の光。
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