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七、空の絆②

偵察用の小型戦闘機だ。 俺達がこれから対峙するであろうF6Fヘルキャットでないなら、機体の防弾装甲は薄い。 (当たれば墜ちる) 出来る事ならば戦闘は避けたい。 だが、敵空母に帰還を許しては奇襲が明るみになる。 帰還しなかったら、それはそれで警戒を招くが、詳細を本艦に知られるよりはマシだ。 無論、俺達が退くという選択肢もある。 安全策を取るか。 隊長たるあなた次第。 (先生) あなたは、どう出る? …………ツッ 無線のランプが光った。 『二時の方角に敵、哨戒機あり。撃墜する』 (来た!) 特攻作戦は続行。 敵機撃墜の命令が下された。 (今しかない) 俺の望みを叶えるには、今しか…… ……ツッ 「ハルジオン、先行する」 先生の許可を待たず、操縦桿を倒した。 エンジンがうなる。 轟音を巻き上げて、夜の闇を滑空する。 哨戒機を射程圏に捕らえた。 (まだだ) まだ砲火は放たない。 夜の闇に紛れて哨戒機を追う。 空母には帰らせない。 だが、まだお前を撃たない。 お前は(オトリ)だ。

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