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七、空の絆④
弾道の軌道は、あなたの乗る機影を掠めた。
機体の致命傷には至らない。
しかし。
(あなたは、もう飛べない)
零戦は機動力重視のために、限界まで装甲を削り軽量化したのだ。
被弾に弱い。
掠めただけでも。
飛行に支障をきたす。
(あなたの機体はもう、南方海域まで辿り着けない)
「俺がやったんだァァァァーッ!!」
発射すれば先生の機体を傷つける。
分かっていて、俺はあのタイミングでわざとッ
…………………き、て、ほしかったから。
あなたに………
「生きてほしかったから………」
基地に戻っても、すぐにまた出撃命令が下るだろう。
けれど。
もしかすると、その間に戦争が終わるかも知れない。
もしも戦争が終われば、あなたはこの先もずっと生きられる。
俺は、間違っているよ……
あなたの思いをなかった事にしようとして。
『最後まで共に』
いっしょにいると誓ったのに。
全部、俺の身勝手だ。
あなたを撃った指先で通信を切った。
基地へ引き返すあなたの機影のエンジン音だけが背後に響いていた。
空が、海のように鳴いていた。
海鳴りがずっと聞こえていた。
先生……
あなたに。
「生きてほしい……」
「君は残された者の気持ちを分かっていない」
強く抱きしめる体温の下で、声が響く。
鼓動よりも切なく、胸を侵食する。
(ゼスカ……)
どうして。
「なぜ俺を残して行ったんだ?」
あなたは、ゼスカじゃないのか。
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