35 / 40
八、波のささめき
俺を抱く腕に力がこもった。
あなたの体温が何かを訴えている。
あなたは……
「君の……」
俺は、気づいてしまったよ。
肌の色も違う。
瞳の色も違う。
けれど……
「気持ちが俺から離れても、君を大切に思っている」
「離れるわけないよっ!」
あなたは。
どうして。
なぜ、今やっと気づいたんだろう。
こんなにも近くにいてくれたのに。
ゼスカ……
ゼスカと名乗るあなたは……
「先生」
「……ごめんな。ずっと黙っていて」
あなたの指が俺の左手首をなぞった。
白いカケラが静かに揺れる。
「もう一度、付けてくれたね。ありがとう」
あなたがくれた白い貝殻のブレスレット……
あなたが俺の手を包んだ。
「なにも言わなくていい。後悔もしなくていい。全部分かっているから」
俺の命は……
「君が俺に残してくれた命だ」
ともだちにシェアしよう!