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九、瞳のささめき
あなたはゼスカ・ロイウェルと名乗った。
なぜ、あなたが姿を変えて。
名もなき島の住人として、 なぜ、あなたが『ゼスカ』と名乗ったのか。
理由は分からない。
けれども、あなたは。
「俺の先生」
深い口づけを交わす。
「『君の先生』……悪くないね。君だけのものだ」
唇と唇が重なる。
「今度は名前で呼んでくれないかい」
(俺、まだ先生を名前で呼んだ事がない)
小さい頃は『お兄ちゃん』で、少し大きくなってからは、ずっと『先生』だったから。
「俺の名前、忘れた?」
意地悪な唇が啄んだ。
うながすように触れるだけの口づけをする。
「修一郎(しゅういちろう)さん!」
「正解だ」
ご褒美の口づけが降りてきた。
(あっ……)
緋色を灯した瞳の色が消える。
蝋燭の朱の色彩が揺らいだ次の瞬間、先生の瞳が漆黒に戻っていた。
魔法が解けたみたいに。
あなたの姿で、あなたが俺の前にいる。
「君を抱きたい」
いいね……と、問いかけたあなたに俺は口づけで返した。
(俺も、あなたに抱かれたい)
こんな事を思う俺はふしだらですか?
「可愛い恋人だよ。愛しい。愛したい。もっと深く深く愛したい」
真っ直ぐな眼差しが俺を捕らえる。
「君にもっと愛されたい。俺の願い、叶えてくれるか」
「はい……」
安堵の瞳が柔らかく微笑んだ。
「ありがとう」
ものすごい圧迫感だ。
「ここ……」
あなたの手に導かれた俺の手が、その場所をなぞった。
「俺が入っている」
「ハフ」
普段は触る事もない秘された場所が、こんなにも拡がってるなんて!
あなたに囚われた指がグルリと円を描いて、俺とあなたの境目を辿る。
「俺を受け入れてくれて、ありがとう」
ハァハァハァ
こくりと頷く事しかできない。
丹念に慣らされたその場所は痛くはない。熱が中から膨れ上がって苦しい。
(もしかして、先生。まだ大きくなっている?)
「すまない。まだ半分しか入っていない」
「そんな……」
こんなに奥まで来ているのに。
「一気に挿れるよ」
「ハフひぃィィィー!!」
熱根が奥の更に深い所まで。
「辛いか」
「アヒアヒ」
首を横に振って応える。
苦しいけど、苦しくない。先生を俺の中で感じてる。おっきくて熱い先生。
ドクドク、ドクドク
先生が俺の中で脈打っている。
「また、おっきぃ」
「すまない。まだ膨らみそうだ。……気持ちいいよ」
俺と先生……
いま……
「一つに繋がっている」
先生が中でビュクビュクしている。
先生を包む俺のひだが蠢く。
「俺達は一つだ」
どちらともなく腰を揺らす。
激しく突き上げる。
前の突起をこすり付けたくて、先生の腹の上で上下する。
いつの間にか、先生の上に俺が股がっている。
息遣いが鼓動に落ちる。
俺の両脇をかかえて、体位が入れ代わる。
「イクっ」
「ダメだ。まだイクな。もっとこの時間を長く楽しみたい」
「でもっ」
グチュグチュ
卑猥な水音を奏でてあなたが出入りする。
パンパンパンパン
肉と肉がぶつかる。
「もう……」
限界。
白い絶頂が迫る。苛む。
上ってくる。
ドクドク、ドクドク、ドクンドクンッ
溢れてくる。
「いくなッ!」
あなたが呼び止めたけれど。
あなたを再奥に感じて、真っ白い絶頂に果てた。
あたたかい……
トクン、トクン……
あなたの左胸の音を感じるよ。
あなたの温もり、とても心地良い。
まるで直接、鼓動を抱きしめられているみたいに……
俺が先生を包んでいるのに。
俺があなたの中に溶けていきそう。
あなたの腕の中に……
「帰ろう。俺達の祖国に……」
喜びとも悲しみともつかない色をしている。
囁いた漆黒の瞳。
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