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十、海鳴り

とてもあたたかい…… あなたの腕の中は、とても…… とてもあたたかくて…… (眠いんだ) 「すまない。君を守ってやれなかった」 どうして、あなたはそんな泣きそうな声を上げるの? 俺があなたを泣かせているみたい。 あなたの顔、もっと見たいけど。瞼が重くて開かない。 意識が眠りに飲まれていく。 深い深い眠りへ…… 最後の力で、重い腕を上げて、あなたの頭を包んだ。 あなたは泣いているのかな? 俺は…… 「あなたに出逢えて幸せです」 あぁ、そうか…… わかったよ。 あなたが悲しむわけ。 (俺はもう死んでるんだね) あの特攻で、俺の体はハルジオンと共に燃えて、海にさらわれたんだ。 だから俺はもう……消えていく。 魂が辿り着いたこの島で、あなたに再会できたのは奇跡だよ。 あなたが俺に結んでくれた貝殻のブレスレットのお蔭かな? それとも、あなたが俺に刻んでくれた『ハルジオン』の歌のお蔭かな? 海が鳴いている。 「あなたが好き」 ずっとずっとずっと。 この先も、ずっと。 好き。 「大好き」 俺の腕の中で、あなたが頷いたのを感じた。 泣かないでください、先生。 「愛しているから」 だから、もう……泣かないで。 「俺を愛してくれて、ありがとう」 幸せをいっぱい、ありがとう。 大好きです。先生。

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