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十三、(後日譚) 夜明けはくる

「先生!」 「わっ」 顔を見合わせて、パチクリ★ 「お前、なんでそうなるわけ?」 「えっと……先輩?」 「そうです。先輩です」 「で。なんで俺、寝てるんですか」 「あぁ、もうっ」 「もしかして先輩。怒ってますか」 「怒っとるわ!」 窓辺のカーテンが揺れて、風が吹き込んだ。 「とにかく、これ飲んで」 「あ、ありがとうございます」 手渡されたペットボトルの水を、喉を鳴らして飲んだ。 「お前は倒れたんだよ。熱中症で」 「あっ」 「思い出した?」 「たくっ、根詰めすぎなんだよ」 「ごめん。でも『零戦復活プロジェクト』だから……」 「そうだな。大切なプロジェクトだ」 日本海軍の戦闘機は戦争で、そのほとんどが特攻作戦により失われた。 わずかに残された戦闘機も、戦後GHQの命令で火を放たれ、焼失する運命を辿る。 そんな中で、博物館に展示されていた零戦を再び空へ飛び立たせようというプロジェクトが立ち上がった。 今、俺達、航空大学生が零戦を整備している。 まだまだ前途多難だ。 「飛びたいね」 「そうだな」 失われた命は戻らない。 けれど…… もしも魂が存在するなら、平和になったこの国を空から見てほしい。 もう一度、零戦を空へ。 戦いのない空へ。 「大事なプロジェクトだから、お前が倒れたらダメだろ」 「はい」 「今日は一切の整備禁止。ゆっくり休め」 「はーい」 「あと、俺は先生じゃない。せ・ん・ぱい」 「はいはい」 「おい、なんだよ。ぞんざいな扱い」 「だって、先輩だもーん」 アハハハハ 「ひどいな、ハハハ」 風がそよいだ。 「ん?その歌は」 「なんだろう。寝ている間に聞こえてたような……」 鼻歌まじりに歌った。 歌詞は分からないけど。たぶん、こんなメロディー 「……そっか。いい歌だな」 「うん」 暫く先輩が聞いていてくれた。 名もなき歌を。 「なぁ」 不意に歌が途切れた。 (…………………………せんぱい) 唇が歌を奪った。 「ごめん。急にキスしたくなった。嫌だった?」 「…………嫌じゃない。ビックリしただけ」 ドキン、ドキン、ドキン 鼓動が胸を打つ。 心臓が飛び出しそう。 そっか……って、先輩が笑った。 「大事にする。絶対にお前を大事にする」 真っ直ぐな瞳が俺を見つめている。 「俺と付き合ってください」 もしも魂に結びつきがあるならば、それは未来永劫離れない。 君を見つけた…… 【完】

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