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第1話
最近見つけたお気に入りのハッテン場は、カップルになる率が高くて気に入っている。
小さい頃から「可愛い可愛い」と言われ続けて来たお陰で、外見の自信だけはあった。
だから自分から行かなくたって、声を掛けて貰える。
そして“また今度”なんて断る選択肢を持ち合わせてないのも、相手に困らない理由の一つでもあった。
「キミ」
ほら。そうしてる間にも声が掛かる。
「良かったら、今から付き合ってくれない?」
“今夜のお相手”を、視線を上げて吟味する。
40代後半のオジサン。
痩せ型で長身。白髪混じりの無精髭も、ダンディーでカッコイイ。
逆に、僕なんかで良いの?って思っちゃう。
こんだけ格好良いんだから、相手なんて選びたい放題だろうに
「うん。良いよ」
いやいや。だから僕が選ばれたんじゃん。
そう思い直して
「どこ行くの?」
にこり笑顔を向けながら、するりと彼の腕に絡み付く。
「このまま真っ直ぐ。ホテルで良いかな?」
渋い声にうっとりする。
「もちろん」
彼に僕は、どう映っているのだろう?
「可愛い」と言われ続けて来た僕は、「可愛い仕草」を求められてる気がして、自然と そう 振る舞う様になっていた。
「あッ。 あッ。 ぁン。 い。 イ。」
突かれるタイミングで漏れる声は、いつもよりゆっくり。
オジサンが相手だと大抵そうだ。
この方が、『キモチイイ』をじっくり堪能出来て、僕は好きだけどね。
「ん。 ッ。 ンあぁ。 イ。 ッちゃ」
リズミカルな腰の動き。この人の、セックスの癖。なんだろうな。
「はぁ。 俺 も」
バックで突く勢いに押されてすっぽ抜けてしまう、なんて事が無いように支えていた、腰に置かれていた手に力が篭る。
「ンはッ!」
グン。と奥まで突き上げられたまま、痙攣の様に全身を震わせ、射精する。
その痙攣の刺激で僕もほぼ同時に果てる事が出来た。
余韻に浸りたいのか、そのまま抜かずに僕に覆いかぶさるオジサン。
「は。 はぁ。 すごく 良かったよ‥‥」
息が切れ切れなのは年のせいか
「うん。僕も オジサン上手」
ふふ。なんて、肩ごしに笑顔を向けたら、キスされた。
「ん‥‥あン」
口唇をなぞる舌に自分のを絡めたら、また硬さを増して行くオジサンの息子さん
「ぅふ。 オジサン 若いね」
絡めた舌の合間からそう言うと
「キミが可愛いすぎるからだろ」
なんてお褒めの言葉
「そんな ッん。 ぁはン」
僕の謙遜を待たずに、またグラインドさせて行くオジサン。
この人となら、また会っても良いかな
そう一瞬だけ思って、後はまた快楽に溺れて行った。。。
オジサンは、日付が変わる前に帰って行く。
「キミはゆっくり泊まって行くと良い」
穏やかな笑顔でそう言うオジサンに
「なごみ」
「ん?」
「僕の名前。和って書いてナゴミって言うんだ」
「そうか、キミは名前まで可愛いんだね」
そう言ってまた笑顔になると
「私は和照 。またタイミングが合ったら付き合ってくれよ。
なごみ君」
それだけ言って部屋を後にした。
そう。あのハッテン場の利用者達は約束をしない。連絡先も交換しない。
その時、そのタイミングで、たまたま会った者同士が、気に入った者同士が、一晩の相手を選択する。
僕だって、よほど気に入らないと名前だって名乗らない。
なので結論から言うと、僕は和照さんを気に入って、和照さんも僕を気に入った。
てだけの事だ。
嬉しいハズなのにどこか寂しい気がしてしまうのは、やはり自分が、誰かの特定の人物には成れていない。って言う現実のせいなのかもしれない。
翌日も、僕は同じ場所に来ていた。
和照さんに会いたかった訳じゃなくて
ただそれが、僕の日課だから。
僕は、家出少年だ。
高校1年で担任に暴行されて、学校に行き辛くなった。
しばらくは家に引き篭っていたけれど、母親が泣くから家も出た。
そうして知らない土地にふらふら迷い込んで、初めはウリをして稼いでいたけど、金が発生すると無茶な要求をするヤカラが居る事を知って、ソレも辞めた。
ここの存在を知ってからは、毎日の様に通っている。こんなに安全なハッテン場も珍しかった。
そうして昼も無く夜も無くウロウロして、昼間っからサカってるヤツには飯を倬 、なんだかんだ食い繋いでいる。
今日は、昼飯にありつけるだろうか?
ふと、リーマン風の知らない男が近付いて来る。
昼間でリーマン。て事は、ただの通りすがりの可能性もあるから要注意だ。
たまにそうやってノンケが紛れ込むからややこしい。
「こんにちは」
話のきっかけに声を掛ける。
「‥‥やぁ」
足元から舐めるように上がって行く視線。
気持ち悪‥‥
けど我慢。吟味されるのは、お互い様。
「休憩?」
時間的にはお昼休憩。
まぁ、それを狙ってココに来たんだけど。
ちょっと小首を傾げて顔を覗く。
中々に地味な顔。タイプじゃないけど、こういう顔も嫌いじゃない。
年も30代?くらいかな。中肉中背に見えるけど、脱いだらメタボ。なんて事もあるかもしれない、と想定しておく。
「ぁ~ぅん」
目が合った瞬間、ニヤける口元。
「欲しいの?」
右手を自分の腰に当てて、軽く前に突き出す。
「『欲しい』って言ったら、ヤッてあげても良いよ」
うわ。変態。
こういう奴はセックスもネチッコイ。に、決まってるんだけど‥‥
背に腹は変えられない。
「うン。欲しい‥‥
ちょうだい?」
お望み通り、オネダリしてやった。
「よ く、出来ました」
相変わらずのニヤケ顔のまま、一瞬、喉が鳴ったのも見逃さない。
「時間無いから、ココで良いだろ?」
そう言って手を引かれると、連れて行かれたのはそこから数件歩いた場所にある建物。
木造の古いアパートだが、人が住んでるのかどうかすら分からない、心霊スポットとしても有名な場所。それでも裏口が常に開け放している事もあって、ただの近道に使っている連中もよく見かけていた。
その、入口から入ってすぐの階段の踊り場。
もし住人(住んでいたらだけど)が来たらきっと大騒ぎだ。
「こんな所‥‥
もし、人が来たら‥‥ン」
言い終えないうちに口唇を塞がれる。
後頭部を抑えられて、逃げる事も出来ないまま、口腔内を犯される。
「ンは。 ンはッ」
ジュルジュルと舌を絡めて唾液を吸うのに必死なコイツの、鼻息が辺りに響く。
まるで獣みたいに僕を求めるコイツ。
飢えてんのか?と、思わずにいられなかった。
身体中をまさぐって、服を剥ぎ取る。
破られなくて良かったとホッと息吐く間もなく、胸の突起にむしゃぶり付く。
舌でベロベロ舐めまわされて、まるで触手にでも犯されてる気分だ。
それでも身体が反応してしまう自分に、自嘲する。
下着ごと剥ぎ取られたパンツもそのままに、触手のような舌が秘所を攻め立てる。
痛みに近い攻めが、昔の教師の暴行を思い出させた。
「ン う‥‥」
苦痛を訴える僕の呻きが
「へへ。ココが良いのか?」
コイツには快感と聞こえるようだ。
こんな所まで似なくて良いのに。
昔のトラウマを刺激されて、少し涙が浮かんだ。
寝転がされ、足を大きく広げられ、腰を持ち上げられる。
半分逆さまの体制で、秘所を広げられて、舌を抜き差しされる。
「ン。あ」
ようやく与えられ始めた快感に、どこか安心感を覚えた。
「イヤラシイ子だ」
嬉しそうにそう呟いて、今度は指を挿入して行く。
「ぁん。ゃ ア‥‥」
僕が喘げば喘ぐほど、機嫌の良くなるソイツ。
「ほら、丸見えだよ?
ぜんぶ、奥まで見えるよ?」
言いながら激しさを増す指使いに
「や。はァ、んんんッ」
身体が、もっともっとと震える。
こんなヤツに。
妙な悔しさを抱きながらも、身体は素直に登り詰めて行く。
「ほら。ほら。
どうして欲しい?
言ってくれないと
分からないぞ?」
ニヤニヤしながら、出会った時と同じ顔をする。
変態!
そう、叫んでやりたかったけど
「い」
「ん?なんて?」
「挿入 れ て」
「何を?指ならもう、入ってるだろ?」
ニヤニヤニヤニヤ。
ああ、コイツマジで最悪だ。
「あなた の チ〇ポを、僕のア 〇ルに 挿入れて
ズボズボし て くださ いィ‥‥」
「はィ
良く出来ました ッはは」
言うなり挿入していた指を引き抜き、代わりにそそり立ったソレを僕に埋める。
「や。あァん」
焦らされた分、身体が快楽を吸収しようと自ら腰を動かす。
「ぅおッ。そん な されたら
ィッてしまう」
「ん。ゥん。あはァッ」
「こら こ ら あァァッ」
もう、コイツのペースには乗らない。
両足を腰に絡めて、顔も見えないように抱きついてやる。
「ゥん。ゥん。ァあん」
自分の気持ちイイように腰をグラインドさせ、集中する。
「だめ だ。 あ あ あァ ィく」
達する前のソコの膨らみを感じて、下腹部に力を入れる。
「だ め。まだ おあづ け」
意地悪く耳元に吐息で囁いて
「そ んなァ‥‥」
ソイツの情けない声を聞いたら、満足
「ん。イ く」
ぶるり。と軽く痙攣を起こして、欲を放出した。
その反動でまたソイツがイキそうになったのを感じた僕は、すぐにソイツから離れてすっぽ抜いてやった。
瞬間、床に白濁した体液を放出したソイツは、少し呆けたように自分の体液を眺めながら何か呟いていたが、無視して速攻身支度を整えると、その場を逃げ出した。
思いっきりハズレを引いた。
まぁ、暴行されなかった分、良かったと思うしか無い。
結局昼飯にも在りつけなかったし、ただ無駄に体力を消耗しただけ‥‥
しかも、アイツの匂いが身体中に纏わりついて気持ち悪い。なんだかまだベタベタするし。
仕方ない。
僕は、着替えと洗濯と、風呂に入りに、荷物を預けている友人宅へと向かった。
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