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第5話

それから 自分も風呂に入って、全身をくまなく洗う。 くまなく、だ。 ドキドキしながら浴室から出る日が来るなんて、想像もしなかった。 照れて僕の裸を見れないともの事を考えて、ガウンを一枚だけ羽織る。 「とも?」 そっとドアを開けて部屋を覗き込む。 と、恥ずかしいのか、すでに豆球にして部屋を薄暗くしている。 そこに敷かれた布団が一式。 客用布団なんて常備してるハズも無く、しかも布団を敷いたら座る場所も無くなり、座布団の代わりにと布団に胡座をかいて座るとも。 これから一緒の布団で寝る事に、必要以上に緊張して照れまくった背中が目に映った。 「や。裸じゃないから見ても良いよ」 クスリと笑いがこみ上げる。 「べッ」 吹き出してから、それでも慎重に振り返るともが可愛い。 「別にそういうつもりじゃ‥‥」 さっきまでの強気が嘘みたいだ。 「でもノーパンだけどね」 言いながら後ろから抱きついてやる。 「ンのッッッ」 あぁもう、イチイチ反応が堪らない。 瞬時に硬直するともに多少不安はあるけれど、今日は絶対逃がさないと決めている。 「んン~~~~ッ」 そのまま後ろから頬にキスをして、体重を乗せれば ごろり。と添い寝状態。 抱きついた腕をそのままに、ともと向き合い視線を合わせる。 真っ赤な顔からは水蒸気でも出そうな勢いだ。 それでもちゃんと?覚悟を決めているのか、今度は視線を外す事無く、僕をしっかり見つめてくれていた。 「なごみ」 僕の名前を呼びながら、そっと頭を撫でてくれる。 ともにこんな事されるのなんて初めてで、ともの高めの体温に引きずられるように、自分の体温も上昇する。 「こんな近くで顔見合わせるの、初めてだね」 「ともが照れ屋さんだからね」 そう言って笑ったら 「‥‥なごみが  綺麗すぎるからだよ」 真剣な顔で、見つめて来る。 「僕は」 一瞬躊躇して 「汚れてるよ?」 過去にどれだけの男が、この身体を通り過ぎて行ったか。 ともが、知らないハズが無い。 なのに 「なごみは、綺麗だよ  すごく純粋で 優しくて 明るくて  温かいの、気付いてないの?」 撫でていた手は、頭からするりと頬に当てられる。 「そんなの  初めて言われた」 外見以外の、褒め言葉。 やばい。溶ける‥‥ 「じゃぁ、この・・なごみは  俺だけのなごみだね」 「うん」 即答したら、キスされた。 「ん‥‥」 しばらく優しいキスに酔っていると、舌が侵入して来る。 それを迎えながら、更に深いキスをしようと密着し、抱き締め合う。 それだけじゃ足りなくて、足をともの腰に絡めて行けば、とものガチガチの息子さんと自分のとがぶつかり合う。 あぁ、ちゃんと 僕が相手でも反応してくれてる。 嬉しくて、そのまま腰を上下に動かし擦り合わせてみる。 「ン。んッ」 一瞬腰が引けた気もしたが、それも一瞬で、自分もぎこちなくではあるが、僕の動きに合わせてくれる。 「ぁ。あン」 そうやってちょっと動いただけで、ガウンは乱れ、ほとんど肌が露わになってしまった。 それをともが脱がせてくれたかと思うと、鎖骨にキスを落とした。 「は。なごみ  きれい‥‥」 荒くて熱い吐息と一緒に、沢山のキスが落とされて行く。 肩に  腕に  手の甲に  指に  胸に  乳首に そこまで来たら、しつこく攻め始める。 口唇で喰んで、指で擦って 「あッ ン ゃ」 僕の喘ぎ声を楽しむかのように、じっくりと 舌先で(くすぐ)られて、吸い着かれて いつも以上に与えられる快感に、それだけでイキそうになる。 こんなの初めてだ 「と も」 思わず名前を呼んで 「すき」 身体中に溢れた好き、って気持ちが、身体の中に収まり切れなくなって 無意識に、零れるように告白をする。 「なご み」 そんな僕の告白に答えるように、上体を起こしてまたキスをする。 早く 早く溶け合いたい 一つになりたい そんな焦りみたいな感情を、舌を絡めて落ち着かせて行く感じだった。 そうやって絡め合うキスですら、与えられるのはただただ快感で 抱き締め合って擦れあう下半身の刺激までもが、僕を追い立てて行く。 しがみつくように抱き締めた時のTシャツの感触がもどかしくて、たくしあげて(むし)り取る。 一瞬離れた口唇が恋しくて、またすぐに口付けた。 ともはともで、僕の口唇に吸い付いたまま、下着を脱ぐという芸当をやってのける。 今度こそお互い全裸で抱き合って、ようやくしっくり来た気がした。 ぴったりと隙間を埋めるように抱き合おうと、足を絡める。 擦り合う下半身は、お互い先走りで濡れ、クチュクチュとイヤラシイ音を漏らしていた。 「ん。ン あ。 ンんッ」 快感の漏れる声。 「はぁ。あ。あァ」 ともの熱い吐息。 触れ合う箇所が、全部熱い。 「なごみィ」 僕の名を呼んで、軽く上体を起こすと、重なり合った互のソレを一緒に握る。 「は。 ァ」 滑りの良くなったソコを上下に扱いて、登り詰めて行く。 「あ。 あン はァ ック」 ともの手。とものペニス。 それだけで堪らないのに、ともの行為が更に僕を煽り続ける。 そんな満ち足りた快楽に、僕が達するのなんてアッという間で それでも、とももほぼ同時だった事に、妙な満足を覚える。 「とも」 息も整わないうちに、まだ欲しいと、ともに再び抱きつこうとすると、軽く制されてしまう。 「ちょ と待って」 グッと、布団の奥、影の方に手を伸ばして何かを探る。 「あぁ」 ピンと来て、ソレ・・が準備されるのを待つ。 1回イッちゃってるから布団は汚してしまったけれど、被害は最小限が良いだろう。と、大人しくしていると、1つ手渡される。 「ありがと」 端的にお礼を言うと、お互いに装着するなんだかちょっと恥ずかしい時間。 そして 「コレ も  購入してみた」 不慣れな手付きで、やっぱり顔を赤らめながら持ち上げられたソレは、中々に大きめのローション。 「でかッ」 一言無意識の感想を述べてから 「とものエッチ」 ニヤリと口元を歪ませてみる。 「いやだってッ」 一瞬慌ててから 「なごみが  痛くないように‥‥」 そんな可愛い事を言うもんだから 抱き付いて口唇を奪ってしまった。 「全部  大事に、使い切ろうね」 身元で囁いて、ともの準備してくれたローションのキャップを外す。 トロトロと自分の手に取ってから、ゴロリと転がり太ももを持ち上げ、秘所へと塗りたくった。 「やり方 分かる?」 ともは多分、女性とも経験が無い。 「分か ら ない かも」 それでも、僕の行為をマジマジと見て、欲情してくれているのが嬉しい。 「こう だよ」 濡らした秘所に、濡れた指を挿入れて行く。 「ん あ‥‥」 なるべく音を立てて、声を出して ともを煽る。 指を増やして、激しさを増して行くと、自然と喘ぎ声も激しくなって行く 「ぁ あン。 はァ あッ」 そうして、ともの反応を確かめようと振り向くと、口唇を塞がれた。 「ん んン」 舌を絡めて、吸い付いて。 一瞬見えたともの表情。 普段なら見る事が出来ないような、オスの顔をしていた。 もっと、もっとその顔が見たい。 思わずキスの間も目を開く。 その視界の端に映るともの綺麗で長い指。 その指が僕の秘所へと伸ばされて、僕の指の間から中へと潜り込んで来る。 「あン。や ァ」 ビクンと波打つ身体。 ともの、指が 信じられない光景に、目の前がスパークする。 長い、太い、綺麗な指が、僕を犯す。 「あ あァ。ん ッふ」 凄くイイ。思わず抜いてしまった自分の指の代わりにと、ともの指が増やされて、更に快感を与えてくれる。 不器用に(うごめく)指。なのに僕のイイ所を何度も刺激する。 また イッてしまいそうで身悶える。 「だめ とも や。ン イク‥‥ッ」 ブル。と一度痙攣を起こして、(ほとばしり)を吐き出してしまう。 もう。何度イかされてしまうのか 幸せなボヤキを心で呟いて、脱力感に酔いしれる。 「なごみ  かわいい‥‥」 そうやってまたともが頬にキスを寄越すから 簡単に『欲しい』スイッチが入れられる。 「ばかッ」 照れ隠しにそう言って、グルン、と俯せの状態。 腰だけを高く上げてから、秘所を片手で広げて見せた。 「とも()  ちょうだい?」 肩越しに覗き込んだら、アノ、雄の表情。 あァ‥たまんない‥‥ うっとりする間もなく、腰を抑え付けられると、ズブンと太く逞しいソレが、根元まで刺し入れられた。 「は。あァぁン」 痺れるような快感。 クセになる。 身震いするような快感は、突かれる毎に芯まで届く。 ゆっくり進んでは引き返していたソレも、徐々にスピードを増して行く。 「ん あ ゥう すご ッ」 ともから漏れ聞こえる喘ぎ声。 打ち付ける度に零れ出る。 その間隔すらも短くなって行き、後はお互い、無我夢中。 「ごめッ   止まんな‥‥」 最後に聞いたともの声は、夢心地の僕の耳にかろうじて届いていた。      *      *      *   翌朝 気怠い身体を引き()って、のろのろと身体を起こす。 でも目は開いてない 「今何時?」 誰とも無く呟いた言葉に 「11時」 笑う息に混じって答えが帰って来る。 「昼じゃん」 ふふ。と自分も笑いながらようやく開いた目の視線の先に見えるともの背中。 「うん。今昼飯出来るから  顔洗って来な」 振り返りもしないで答えるのは、やっぱり照れなのかな。 あんな事しといて またふふ。と笑ってから、イタズラ心がムクムクと膨れあがる。 「ともー」 言いながら、ベッタリと背中に抱きつき、腰に腕を回した。 「ひゃあ」 変な声と同時に、肩がビクンと跳ね上がる。 「ビックリさせないでよ」 穏やかな声で制してから 「身体‥‥  辛くない?」 優しい気遣い 「辛い」 それにまた意地悪で返して 「とも  激しいんだもん」 ギュ。って抱き締める。 「ご  ごめ‥‥」 密着した背中が、グングン熱くなる。 全身で照れるともが可愛い。 「でも  そこが好き」 「え」 顔だけで振り返るともに、キス。 「僕に、無我夢中になってくれる  ともだから、好き」 今度は、顔を両手で包んで、ディープキス。 「ん‥‥」 それを受け入れて、朝食の準備も半端にして、ともも僕を抱き締め返してくれる。 ジュ。 吸い上げる唾液の音が響く中。 「ぁイテ」 ともが身体を引き剥がす。 「うん?」 「ジーパン‥‥  擦れて痛い」 勃起してしまったソレを、腰を引いて隠そうとしたけれど、ジーパンだから目立ってダメだね。 バレバレすぎて笑ってしまった。 僕達は結局、ともの望み通り一緒に住む事になった。 ともも僕にメロメロだけど、僕もともにメロメロで ともの言う通りに家事を覚えて、通信教育で高校の卒業証明を貰えるように勉強する事にもなった。 勉強はともに教えて貰えるから心配も不安も無かった。 親への連絡は手紙を出す事で落着した。 ともと一緒に住む事が、母親の安心にも繋がったみたいだった。 そういや母親のともへの信頼は厚かったのを思い出した。 さすがとも。誠実で真面目なだけある。と、惚れ直したのは言うまでもない。 父親は相変わらず僕には無関心みたいだけど、無事が確認出来て安心していると、母親の手紙で知った。 なので、通信教育の費用と、卒業までのとものアパートの居候代は、親が払ってくれる事になったので、本腰を入れて頑張らなければならなくなった。 一気にやらなければならない事が大量に出来て、中々大変な状況になったハズなのに、何故か心は晴れ晴れとしていた。 「あ」 「ん?」 「表札」 「表札?」 ともが少し照れたように 「なごみの名前。表札に足しておかなきゃね」 そう言って、ドアの上に差し込んであった表札を持ってくる。 「はい」 手渡された細長い表札に、手元の細ペンで名前を書く 『不破(ふわ) (なごみ)』 隣同士に並ぶ名前を見て、妙にくすぐったくなるのは幸せの仕業だろうか 「そういえばなごみって、不破って苗字だったっけ」 不意に言われて 「うん」 頷いたら、クス。と一人で笑われる。 「なに?」 ちょっと不満に思っていると、答えが帰って来る。 「なごみってさ、『わ』って読むじゃん」 「うん?」 「だからさ、中学の頃、みんな影でお前の事、『ふわわ』って呼んでたの  知らなかっただろ?」 「えぇぇえぇ~  知らないよぉ~」 口を尖らせて不満気には振舞っていたけれど、そんな可愛らしいなあだ名で呼んでくれていたのかと、なんだかほっこりした。 僕の唯一のウィークポイントになってしまったともに 翻弄されて生きて行く楽しさを 隣に居られる幸せを、 一つ一つ丁寧に、噛み締めながら    ~おわる~

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