9 / 13

8 、、

あぁ、やっぱり酒の味がする。 貪るようにキスをし、舌を絡められて、快感で目眩がしてくる。 「指、入れるよ」 「……うん」 久しぶりすぎて緊張する。 不安からなのか、手が震え、体が冷える。 怖い。嫌でも思い出してしまう黒い記憶。 助けを呼んでも誰にも届かなかった悲鳴。 やめてくれ、今、そんなことを思い出してる場合じゃないのに。 思わず、彼の体を引き寄せ、肩に顔を埋めた。 彼がクスッと笑い、指が後ろに触れた。 いっその事、あの時に感情なんて失ってしまえたら楽だったのに……。 「遥輝くん、ここかい? ここが好きなのかい? 」 「んぁ、あっぅ……ぃや! やだ! ぃたっ、やだぁ!! ああぁ! 」 「ほら、いやいや言って泣いてないで、気持ちいいって言ってごらん? ほらっ!!」 「あああ、っん!!」 あぁ、やっぱり、怖いや。 「言っただろ? 俺は痛いことはしないって」 「え?」 記憶から引き剥がされて、彼の顔を見る。 「それに、無理はさせたくない。怖かったり、不安だったりするなら、別に今日やらなくたっていい」 「で、でも、それじゃ……!! 」 それじゃ、ダメなんだ。 じゃないと、あの人が何をするか分からない。 少しでも早く、関係を断ち切りたいんだ。 「だから! 」 強く、抱き締められる。彼の早い息遣いが、耳元を撫でる。 「だから……明日も、ここに来て……」 「……いいの? できないんだよ? 」 「分かってる。明日もまた優しくするし、無理矢理なんてしない。だから、また来て。 夜の間だけ……そばにいてくれればいい」 頭を撫でていた手が頬へと降りてくる。 どこか悲しげな目をする彼がなんだか自分と重なって……。 「わかった」 優しく、何かを忘れたがっているかのように、互いを求め、キスをした。

ともだちにシェアしよう!