8 / 13
7 甘みと痛み
甘く蕩けるような、触れるだけのキス。
あまりに急にキスされて、目を閉じるタイミングを逃してしまった。
手を握り、髪を撫でられる。
目眩がするようなキスの中、じっと彼の顔を見ていたら、彼が目を開けた。
目が合い、ドキッとする。
今まで見た事のないような、優しい瞳。
心の中全てを見透かされているようで、頬が熱くなって、恥ずかしくて目を閉じた。
唇がそっと離れて、頬や髪にキスを落とされながら、彼のシャツのボタンを外す。
その間、何度も彼と目が合い、顔がますます熱くなった。
「照れてるの?」
別に、照れてるわけじゃない。そうじゃないけど……。
あまりにもキザなことをするから、どう反応していいのか、分からないだけで……。
思わず、顔を背ける。
気が付くと、自分のシャツのボタンと下のズボンが脱がされていた。
いつのまに!?
「他の人と、こんなことしたこと、ある? 」
心臓の音が、一瞬、止まった気がした。
そして、嫌な音を立てて、鼓動がはやくなる。
なんで……。
どうして、そんなこと聞くんだよ。
そりゃもう、沢山。数え切れないくらいに。
最初は自分本位じゃなかった。
けど、今は?
挿れてはないけど、毎晩色んな人を相手にして。
喘いで、啼いて、嘘をついて……。
そんな僕のことを、そのまま話したらどうなる?
幻滅する? それとも……。
そんなの、想像しなくたって分かってる。
だったら……。
「ううん。恥ずかしながら、祐さんが初めて」
その言葉に、裕さんは満足気に笑った。
「そっか。じゃあ、今日は優しく、可愛がってあげる」
慣れていたはずの嘘に、僕は、少しだけ、胸が苦しくなった。
ともだちにシェアしよう!