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甘えたような優しい表情。
笑いかける時にできるえくぼがなんだかいい。
ホテルに誘っている時の少し色香がある表情。
酒に酔って、頬を赤く染めた彼の姿。
俺はずっと、そんな姿に目を奪われていた。
話しかけてみようか……。
いや、認識しているのは俺だけ。彼は俺には見向きもしない。
声をかける機会がなく、半ば観察対象としてしか見なくなったある日。
その日はなかなか相手が見つからず、一人で飲んでいた時だった。
「ね・・・お兄さん。一人なら、僕と一緒に飲まない? 」
聞き馴染んだ声がすぐ後ろから聞こえてきて、軽く後ろを振り返る。
なんでここに!?
そこには、毎日のように見ていた彼の姿があった。
彼の服装をいったん見る。いつものようにラフなTシャツ。
これを着てる時は、必ずと言っていいほどホテル街へ行くのをみかける。
相手もいなかったし、乗ってあげてもいいかな?
「・・・いいよ」
「ありがとう」
俺の横に座り、マジマジと顔を見られる。
なにか顔に着いているのかと心配になるくらい。
「僕、椎名遥輝。お兄さんの名前は? 」
「裕」
椎名か……。この辺じゃあまり見ない苗字だな…。
「遥輝は学生? もしかして未成年じゃないよね」
とりあえず気になっていたことを確認。
「今年でちょうど二十だよ。裕さんは、やっぱり僕より年上だよね。というか、僕ってそんなに幼顔? 」
俺と距離を詰めながら、不服げに目線を逸らす遥輝。
わざとやっているのか、無意識なのかは分からないが、時々肩が当たるくらい近い。
「いや、綺麗な顔立ちだとは思ったよ。だけど、お酒は飲まなそうに見えた」
これは本音。
女子みたいな顔という訳では無い。
ただ単に顔が整っているってこと。
俺はその表情をマジマジと見ながら、酒を1口飲んだ。
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