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高校の卒業式当日、いきなりフラレた。 あれから2年。 俺も大人の仲間入り、二十歳になっていた。 そして、彼氏居ない歴もちょうど2年。 氷河期と言われていた就職難に勝利した俺だったが、会社に慣れ、仕事に慣れ、人間関係に慣れるまでに要した期間が2年。 『初めが肝心』と気合を入れ、『これだから高卒は』なんて言われないようにガムシャラに働いて、ようやく全体像を掴み、少なからず余裕を持って仕事に取り組めるようになった。 「友弥(ともや)、今日呑み行くべ」 「ぉー」 心を許せる友人も出来た。 が、恋人は、まだだ。 2年って期間は、 ナカナカだ。 「あ~~~ ちゅーしてぇぇぇぇ~」 いつもの居酒屋。 いつものカウンターに並んで座る。 そしていつもの、勇次(ゆうじ)の台詞。 酔いが回ると、勇次は大概こう言う。 酔って来た証と言っても良いくらいだ。 「本当、お互い早くカノジョ作ろうな~?」 酔った勇次の肩を抱き抱えて、掌で肩をポンポン叩いて慰める。 俺達はよく恋愛話をした。 ただし俺の場合は“彼氏”を“彼女”に置き換えて、だけど。 「もぅ今日さー、キャバかソープ行かねぇ~?」 組んだ肩がそのままだったのを良い事に、勇次が甘える様に腕を回し、しな垂れ掛かって来る。 今日は珍しく、いつもと違う台詞が飛んでいた。 よっぽど溜まってんだな。 なんて、他人事じゃない。 俺だって溜まってる。 かと言ってソープに行ってスッキリ出来る様な、ノーマルなオトコでもない。 一人で指でオナってたって、雄のソレとは比較にならない。物足りない。 身体が、心が、飢えてるのは、俺だっておんなじだ。 「ダメ。」 端的に結論を先に伝える。 『一緒には行けない。行きたくない』 って本音は、仕舞い込んで 「お前、そんなに酔ってたら、きっと勃たないぜ?払い損だぜ? 勿体無いからさ、また今度にしろよ。な?」 もっともらしい言い訳を吐く。 「ぅぅううぅぅぅぅ~」 そんで、勇次は、素直なヤツだ。 だから、今までたくさん吐いて来た俺の嘘達も、疑う事無く素直に信じて聞いてくれてる。 受け入れてくれてる。 俺の一番好きな所。 失いたくない、って、思わせられる所。 「ぅし。んじゃ、また今度な!絶対な!」 「ハイハイ、分かったから」 体重を掛けられて寄りかかられて、左右に振られ、る。 「「…ぅぅおぇ…ぷ」」 2人、ハモった。 ※酔った時にむやみに身体を揺さぶってはいけません。 翌日の、休日。 昨日あんな話をしたせいか、昔、元彼が話していた“噂”を思い出していた。 『身体の、疼き、に』 身体の、芯が、ザワつく。 『応えてくれる、相手と』 ずっと、人肌が、恋しかった。 『出逢える、場所』 もぅ、誰でも、良い。 触れて…欲しい… まるで逆上(のぼ)せたみたいに、頭がボーっとする。 二日酔い、するほど呑んでなかったけど 少し、残っているんだろうか? そんな言い訳を自分にしてから、越して2年の、一人暮らしのアパートを出る。 目星は、付けていた。 伊達に2年も、外回り営業やってない。 否、もしかしたら、無意識にそれらしい場所を、探していたのかもしれない。 月日を重ねる毎に、身体が疼く毎に。 そうしてぼんやり考え事をしながら歩いて行くと、目的の『ハッテン場』付近に辿り着いた。 この角を曲がれば、目指すその場所が見えて来る、ハズ。 と、スーツ姿のメガネのおっさんも一緒に、視界に入る。 『先客、か。』 自然にそう思った。 雰囲気が、ね。 コッチ側の人間のそれを(まと)っているように見えた。 確証は無いけど。 どちらにせよ、そもそも『出会い』が目的なので、そのまま歩を進めると、メガネスーツの視線とぶつかる。 ジッとこちらを凝視して、俺が辿り着くのを待ってるみたいだ。 もしソウなら、彼でも良い。誰でも良いと思って、ここへ来たのだから。 そうしてメガネさんの横に辿り着く。 遠くからだと分かり辛かったけど、思ったほど低くない身長。 170、と、ちょっと、って所か? 俺と10cmくらいしか違わないんじゃないか? 見上げる角度も、疲れなくて丁度良い。 「こんにちは」 そう挨拶してから気付く。 そういえばまだ、午後2時頃。 なのにスーツって事は、休日出勤の外回り。 ひと仕事終わって、しばしの休憩、って所かもしれない。 あぁ、どんだけ飢えてんだ俺。 失礼な事を、失礼な感情を、見ず知らずのおじさんに抱いてしまった。 情けない。申し訳無い。 「こんにちは」 反省してる所に、あいさつを返してくれる。 よく見ると、痩せて骨ばった顔と、手と。 キチンと整えられたヘアスタイルが、彼の真面目さを表しているようだった。 スーツも時計も靴も、使い古して色褪せていて、きっと稼ぎも良くないんだろうな、なんて印象を与える。 でもそこが俺には、親近感を抱かせた。 「今日は暑いですね、外回りですか? お疲れ様です」 ただ声を掛けるためだけにココに来たと思われないために、通り過ぎようと足を踏み出す。 「そうですね、今日は特に。 急遽休日出勤だったんですが、もう仕事も終わったんで…」 言葉を紡ぎながら進行方向へと回り込み、さり気なく道を塞いだ。 「どうです?良かったら 今から俺と。」 言いながら差し出された右手の手の平。 節だっていて細く長い指。 中指のペンだこが、『働く男』を印象付けた。 『誰でも良い』 と思って来たけど、 『彼が良い』 と、自然に思った。 ----------------------------------- 「シャワー、一緒に浴びない?」 近くの、休日でも安いホテル内。 フリータイムで入室してすぐ、思いもしなかった言葉が、後から入ってきた彼の口から飛び込んで来た。 「い…いきなり!??」 動揺を隠さず振り向くと、顎を抑え、口付けられる。 「んぅ…ッ」 懐かしい感触。 でも、新鮮な感触。 初めて逢った人なのに、こんな積極的に攻めて来られると、さすがに戸惑う。 けど、あそこで出逢うって、そういう事。 欲望を、満たすための… “チリ” と、何故か胸の奥が(きし)んだ。 「ン、ふ。」 ぬら、と舌が怪しく蠢く。 口内を味わうように蠢いて、舌を吸われて、また奥に差し込まれて。 『き…もちぃ…ッ』 よく考えたら、初めてのキスも、初めてのセックスも、高校での経験。 こんな大人な知識もテクも、あるわけ無くて。 いっそ初体験みたいな、感覚。 「ッチュッ」 ようやく離れた口唇からは、唾液が顎を伝い落ちた。 「キス…う、ま…はぁ。」 呼吸をするのも精一杯。 「ね?一緒にお風呂入った方が、良いでしょ?」 半分以上抜けた腰を抱えて、彼は浴室へ向かって歩き出す。 「はぃ…」 マズイ。俺このまま、マグロになりそうな… …予感… それでは格好が悪い、と、服を脱がされるのだけは、頑なに拒んだ。 ムラサキ色で埋め尽くされた浴室に入ると、お湯を溜めつつ、その間に、汗をシャワーで流す。 特に彼の方が汗をかいていたので、サッパリしたかったらしい。 度はキツくないらしいメガネを外し、セットした髪を洗い流すと、意外な程の男前が現れた。 「ビックリ。4、50代かと思ってた…」 素直に伝えると、ニヤリと口を歪ませる。 「こうやって、余計な人間を遠ざけんの。 人付き合いって色々面倒でさ。 特にオンナ。 俺に言い寄ったって、無意味なのにね。 本当は37だけど、見えなかったろ?」 「み…見えなかった…」 俺の答えに満足げに微笑んで 「お前も、髪濡れてると高校生みたいな」 言いながら頭を撫でて、額に口付ける。 大人な言動に、ドキドキさせられっぱなしだ。 「うっさい!これでもハタチ!大人だ!」 って叫んじゃう辺り、子供っぽい。 …反省。 「へぇ。ようこそ大人の世界へ」 クスクス笑いながら、また頭を撫でられる。 子供扱いされて悔しいハズなのに、振り払う事なんか出来ないくらい、心地良いなんて。 なんかずるい。不公平。 「ね、名前…って、聞いちゃいけないモン?」 耳元で名前を呼ぶ。って攻撃は、この人には有効なんだろうか? 「いんや?まぁ個人の自由でしょ。 俺は、知りたいけどね、君の名前。」 何このやりとり。 俺の事、知りたがってるの?って思うだけで、鼓動が早くなる。 なんかもぅ、ペース乱されっぱなし。 「友弥…。永倉(ながくら)友弥(ともや)」 言うなり少し吹き出される。 「フルネームで来ると思わなかった」 あ。そうか、この場合、愛称でも良いのか。 初心者な俺は、また恥を掻いて顔を赤らめる。 「いや、良んだけどね。 なんつーか…信頼してくれてるみたいで、嬉しいっつーか… う~ん。違うな。」 顎に手を当て、考えるようにしてから、 「なんだろう?愛しぃ?く、なっちゃうのかな」 『愛しい』ってワードに、心臓が跳ねる。 今度は恥とは違う意味で顔を赤らめていると、 「俺、洸太。高宮洸太(たかみやこうた)って言うんだ。 好きに呼んでくれて良いよ」 そうして俺の顎に手を遣り、顔を上向けると、触れるだけのキスをした。 キス魔、なのかな? なんて分析をしてしまうのは、洸太、さんの事を知りたいと思っている証なんだろうか? あんまり俺がぼんやりしてるせいか、洸太さんがボディーソープで泡立てたスポンジを俺の顔に押し当てた。 「ゎっぷ!」 思わず退いて床に尻餅を着くと、また笑われる。 「コラ。あんまりボーっとしてると、風呂入るだけで時間使い切っちゃうぞ!」 「そ!そこまでどんくさくありません!」 あれ?これじゃ自分がどんくさいって言ってるみたいじゃないか 自分で思うより早く、洸太さんにまた笑われた。 しわくちゃになって笑う笑顔も、 好きだなぁ… なんて見蕩(みと)れた事に自覚して、誤魔化すようにスポンジを奪った。 「背中、洗ってあげますよ」 そう言ってスポンジを当てた背中は、やっぱり痩せっぽちな印象を受けた。 「洸太さん、ガリッすね。 ちゃんとメシ食ってます?」 これじゃぁ背中を流し終えるのにも、さほど時間は掛からなそうだ。 「食って…るよ。一日二食!」 「コンビニ弁当?」 「なんで分かるの?」 「栄養足りてなさそうだから」 『これっぽっちの会話で、背中も流し終わってしまうほどにね。』 心で呟いて 「…心配になっちゃいますよ」 言葉で呟いて。 「大丈夫だって。ここまでちゃんと一人で生きて来れたんだから。 ハイ、交代」 なんだか誤魔化すみたいに、スポンジを奪われる。 「友弥は、綺麗な身体してんね。 健康的な生活してんだろね 親と住んでるとか?」 首の後ろから、丁寧に流して貰いながら、今度は洸太さんが質問を始める。 「いえ。2年前から一人暮らしで、自炊頑張ってますよ。 洸太さんと違って」 「イタイ事言うねぇ。 しょうがないじゃない、俺にメシ作ってくれるような、可愛い恋人でも居てくれたら、こうはならなかったよ」 『じゃ、俺が』 言いかけて、 思い止まってしまったのは、 この出逢いが、自然では無いから。 性処理として出逢っただけの、 気持ち悦いセックスをするための、 ただの、コミュ二ケーション、 だから。 『あ゛~~~~ 胸がイタイ。』 「恋人、何年居ないんです?」 誤魔化す様に会話を繋ぐ。 「もう…5年?かな? 友弥は?」 「俺、2年です」 「じゃ、高校生の頃か。 今と大して変わんなかったんだろな」 クス。って、また笑うのが聞こえる。 『子供って、言いたいの? 成長してない、って?』 ヤバイ。こんな気分じゃ、セックス出来ない。 折角、洸太さんと気持ち悦いセックス出来ると思ってたのに。 ちゃんと、抱かれたいのに。 悔しいような、悲しいような気分に、支配されそうになる。 「俺、ちゃんと大人ッすよ」 「ぇ」 洸太さんの隙を突いてキスをする。 さっき教わったばっかりの(つたな)いキスは、洸太さんの気持ちを俺に向ける事が出来るだろうか? 俺なんかが、洸太さんを満足させる事なんて出来るんだろうか? 相変わらず、ネガティブ思考は俺の中で渦巻いてるけど、快楽でそれを払拭しようと試みる。 洸太さん。 洸太さんで、こんな気分、吹き飛ばしてよ。 心だけじゃなく、身体も、洸太さんで 埋め尽くして欲しい… 『すき』 って言う代わりに、 『きす』 を、いっぱいしよう。 きす、きす、きすきすきすきすき って、いつかスキに変わるって、 気付いて。 攻めるキスをしたハズなのに、後頭部を抑えられて、攻められるキスを受ける。 やっぱ巧い。 誰が大人だよ。なんて自分でツッコミを入れながら、それでも精一杯、洸太さんの下腹部へと手を伸ばす。 『あ。 ちゃんと反応してくれてる…』 嬉しくて、泡まみれのソコを指先で扱く。 「…ん…。」 濡れた声が、色っぽい… 初めて聞く声に、煽られるようだ。 俺の動きに応えるように、洸太さんも俺の胸を掌で一度撫で、突起を見つけると親指の腹で何度も擦り上げた。 「あ…はぁ…」 塞がっていた口唇の隙間から吐息が漏れると、その手は脇腹を伝い、下腹部を撫でながら、俺の自身へと伸ばされる。 泡でぬるぬるになっていたソコを握られて、上下に扱かれただけでイってしまいそうになる。 なのに、妙な意地が働いて、勝手に必死に、我慢を始めた。 互いに限界まで膨らんだソコを扱きながら、舌を絡め合い、喘ぎ合う。 荒い息と、グチュグチュと言う水音と、喘ぎ声と。 全部が浴室に響き合って、鼓膜から侵入し、脳内をレイプされる。 思考を遮断されたかのように、頭の中は空っぽで、ただ、快楽だけが占めていた。 「も…ダメ… 限、か、ィッ!んンッ!」 先に絶頂を迎えたのは当然俺で。 イク時に痙攣した指先の刺激で 「あぅ、ッンは!」 洸太さんも、イったみたいだった。 泡なのか、精液なのか、 デロデロになった身体を、もう一度洗い流して、身体も拭かず、それでもようやくベッドへと移動する。 ヤル事は一つなので、2人共全裸のままだ。 「1回抜いたから、次は保つよ」 冗談なのか本気なのか判断の付かない顔で、洸太さんが笑いながら、財布を持ってベッド脇に設置されている小ぶりなBOXへと手を掛ける。 『あぁ、ローション。』 納得しながら、ベッドの真ん中にダイブして、仰向く。 顔だけ洸太さんの方を向いて 「さっきも長持ちだったでしょ」 俺も、笑いながら返すけど、これは本音だ。 「そう?いつもより、短い方だったよ 友弥が可愛かったからかな?」 言いながらベッド上部のスペースにローションを置き、ベッドの端に腰を下ろすと、自然にキスをする。 「俺、可愛いの?」 見上げながら聞くと 「可愛いよ?」 頬を撫でて、またキスをくれる。 「それっ、…て、 子供っぽい、って、意味?」 ちょっと途切れ途切れになってしまったのは、不安だったから。 何が? 分かんない、けど 「何? あ、そっか。 ハタチって、微妙なお年頃だよね」 俺も気付かない何かに気付いて、洸太さんがまた、あのシワクチャな笑顔で微笑む。 「友弥は、綺麗、だよ」 そう言ってまたキスをしてから 「外見も、内面も、綺麗だと、俺は思う。」 もう一度言って、今度は俺が返答出来ないように、深く口付けた。 「ぅ。ん…」 喘ぎなのか、返事なのか分からない声を漏らして、洸太さんの首に腕を回してしがみつく。 どうしよう。 時間を共有する毎に、肌に触れる毎に、どんどん洸太さんを好きになる。 今日だけの関係にしたくないと、心が悲鳴を上げ始めた。 「ふ。あぁ…」 なのに身体は、与えられる快楽に素直に反応して、また俺から思考を奪い始める。 洸太さんの舌が離れたと思うと、今度は顎を伝い、喉に一度吸い付き、鎖骨にも吸い付いてから、胸の突起を舐め上げ、吸い付く。 「ンッ、は、ぁあッ」 すでに尖ったソコを厭らしく舌で(なぶ)って、吸い上げて、沢山の痕を残して行く。 右と左と、両方に。 それが嬉しくて、気持ち良くて、頭の芯がジンジンした。 思考回路、焼き切れちゃったのかな? なんて、間抜けな事を思った事は、子供っぽい気がしたから黙っておく。 胸に残した痕を、満足気に眺めてから、洸太さんは更に下を目指して舌を這わす。 浴室では扱くだけだったソコに辿り着いたら、今回は口唇と舌で根元から少しづつキスを繰り返して、先端まで辿り着いたら舌で窪みを擦りつけた。 何このテク。大人すぎるテク。 与えられる初めての経験に、初級者の俺は翻弄されるばかりで、呼吸と、喘ぎと、痙攣とを、ダダ漏れに繰り返すばかりだ。 洸太さんの姿すら確認出来ないままに、必死に目を瞑って、絶え間なく襲って来る快楽に逃げ場すら失い、ただただ悶えるしかなかった。 「トモ」 意識朦朧の俺を、愛称で呼ぶ、愛しい人。 「すっげ、厭らしィ~」 悶える俺を確認して、嬉しそうな声を上げて 「こ…」 声を出そうとした俺からまた、言葉を奪う。 「ン、ふぅッッッ!」 喉元まで咥え込んだソコを、洸太さんの舌がまた厭らしくなぞる。 口内で蠢く舌は、まるで違う生き物みたいに俺のソコを刺激し続ける。 「あッ!やッ…ッ!ぅ、ン!ンう!」 下半身からの快楽が身体の中を通り抜け、口から出ていくかのように、ただただ喘ぎ声が俺の口から溢れ出続ける。 そこに追い打ちを掛けるように、上下に激しく扱き始めるから 「ン!ふぁ!はッ!んゃ…ぁッ」 ほんの数回だったと思う。 限界が近かった俺のソレは、あっさり限界を迎えて、洸太さんの口内を汚してしまった。 「こう、たさ…、ごめ…」 息も絶え絶えに、どうにか謝罪の言葉を。と思いながらも、やっぱり声にならない。 情けない、俺。 そんな俺を余所に、口内の液を飲み込んで更に、洸太さんは俺のソコを丁寧に舐め、残った液も絡め取って行く。 「ジュ、ピチュ」 なんて、厭らしい音のおまけ付きで。 「も、ヤ…」 ちょっと涙目になった俺に覆い被さってから、 「なんで? すっげー、色っぽかったよ、トモ」 そう言って洸太さんは、溢れる前の涙を、キスで受け止める。 「カッコ悪い…し、 恥ずかしい、し」 なんだろね。 完敗なのが、悔しいんだろうか? 本音の先の、本当の本音を、自分でも見つけられない。 「良いんじゃん? てか、俺には、トモのカッコ悪い所、見せてよ もっと俺に、甘えて良いんだからさ」 ぬら。と、ディープキス。 『そっか。』 それに酔いながら、 『俺、 甘やかして欲しかったんだ』 本音の本音を、見つける。 『この人に』 変に意地を張っていた自分が、ふと、和らいだ気がした。 「こう、た」 キスの隙間から、自然と溢れた言葉。 「ッ!」 それに反応したような気がして、ふと目を開けると、照れた表情の、洸太さん。 『あ』 “耳元で名前を呼ぶ。って攻撃は、この人には有効なんだろうか?” そう自分で思った疑問の答えを、見つけた気がした。 「洸太」 もう一度呼んで、確信。 「友、弥」 またキスをして、 「今度は、俺がシテあげる」 体制を入れ替えて。 洸太みたいに、気持ち悦くなんて出来る自信は無いけれど。 そもそも俺、テクなんて持ってねーし。 それでも、手でスルよりは気持ち良いハズ。 と腹を決めて、すでに硬くなっている洸太のソレを、アイスみたいに舐めて行く。 「ぁ…悦ィ…」 洸太の濡れた声。 それが聞こえるだけで、心が疼く。 悦びが、溢れる。 洸太の先走りが零れて来たのを、舌先で確認してから、口内へ招き入れる。 「ぅ、ン」 洸太の濡れた声。コレ、好き。 その声に酔いながら、上下に扱いて行く。 硬い、硬い、ソレを夢中でしゃぶっていると、股間に温もりを感じる。 いつの間にか体制を変えられて、シックスナインの形。 流石洸太。侮れない。 洸太からの刺激は、今度は柔らかくて、イカせる事より、快楽を優先させてるみたいな、心地良い物だった。 ふいに、ヒヤリとした物が双丘の奥に触れる。 「ヌ.クチュ。」 と、必要以上に音を立てて塗り込まれたソレが、さっきのローションだと理解するのに、さほど時間は掛からなかった。 「ん…ッ。ン!」 しつこく塗り込んでいた指が、今度は中へと差し込まれて行く。 「ニュぷ。クチゅ。」 音が、厭らしい。 俺から、漏れる、音。 「あ…ッ。ぁン」 指の感覚は、2本。 「ヌチュ。クぷ」 わざと音立ててんじゃない?ってくらい、突き刺す指の、快感に負けて口が(おろそ)かになる。 「あ。あ、ぁン。はッ」 「友弥エロいよ、コッチも、声も。」 悦がってんのを楽しむかのように、指の動きを早めたかと思うと、引き抜く。 余韻でジンジンするソコが、ヒクついてるのが自分でも分かった。 「堪んねぇな」 言うなり、器用に身体をずらして、俺の後ろに回り込むと、準備の整ったソコに、自分の雄を根元まで沈めた。 「ア…!ンん、ぅ…」 身体中ビリビリする。 全身が性感帯になったみたいだ。 震えるほどに感じていたのは、俺だけじゃなかったみたいで 「ぅ。わ。ス…ゲ、()…」 洸太の膝の震えは、俺にまで伝わっていた。 “身体の相性” てのが、世の中にはあるらしい。 聞いた事はあっても、そういう人物にはそうそう出逢えない。 それが、俺達には今日、訪れたのだ。 「ゃべ。」 一瞬動けなかった洸太が、今度は一言呟くと 「手加減… するつもりだったんだけどな…」 声からは“申し訳無い”と言う感情が汲み取れたが、そこから先は、俺の感じていた、大人な、余裕な、奔放な、洸太の印象が、根底から覆されるほどの、 “野性“ 言葉通り、洸太は俺に手加減する余裕も無く、快楽を貪るかのように腰を激しく叩きつけ、俺の身体中あちこちを舐め回し、吸い上げ、痕を残し、果ててもそのまま、抜かずに何度も俺の身体を求め続けた。 俺ももちろん、身体が求めるままに洸太を求め、応え、果てても果てても消えない欲望に繋がれるままに、快楽に溺れた。 ------------------------------- 「ん…ッ」 身動(みじろ)ぎして、身体を起こす。 そうだ、俺、失神しちまったんだ。 セックスして失神とか、初めてだよ。 布団の中には誰も居なかったが、気配で洸太の位置を確かめる。 洸太はベッドの隣にある、二人掛けの小さなソファで、テレビを見ながら、上半身だけ裸で煙草をふかしていた。 「煙草…。」 ぼんやりとした頭で、ようやく声を出す。 「ん?」 洸太は、振り向かない。 「吸うんだね」 「あー。んー」 素っ気ない言葉は、別れが近い事を、暗に知らせているのだろうか? ふと、ベッド上部のスペースに、メガネが置きっぱなしなのを見つける。 それを手に取って自分で掛けてみると、ほとんど伊達だった。 「目。本当に悪くないんだ」 「まぁね」 会話が、続かない。 否、続けさせて、くれない、のか。 『また…』 言いかけて、止める。 次に逢う約束は、ナシ、だ。 洸太も、 …洸太は、 性処理に、来てるんだから。 俺も、初めはそうだったけど、 …そうだったからこそ、 何も、責められない。 好きになっちゃったのは、俺の勝手。 でも。やっぱこのまま、別れたくねぇなぁ… 「洸太、はさ。 あそこに、いつもは、いつ頃居んの? 何曜日、とか、何時頃、とか」 こう言う事言うのって、ルール違反なのか? 初心者だから、分かんねーよ! 「洸太、スゲー()かったから、 もし、 もし、良かったらさ…」 「あの場所には、 もう行かない」 視線はテレビ画面。 すっげ、分かり易い、 拒絶。 そんなん、次逢った時にでもさ、普通に拒否ってくれたら良いじゃん。 そっちの方が、まだ傷付かない。 と、思う。 「、そ…」 もう、声も出ない。 1日で恋して、振られて。 やっぱあんな所、行くんじゃなかった。 身体が満たされても、心が満たされなきゃ 虚しいだけだ。 そうだったんだ。 俺、気付かなかった。 俺って、割り切れないタイプだったんだ。 こういうの、向いてない。ってだけの事だ。 良いお勉強になりました。 ありがとね、洸太、…さん。 じわり。 涙が浮かんだ頃、煙草を揉み消す音と、テレビの消される音が順に耳に届く。 『そろそろ退室、かな あ。メガネ返さなきゃ。 てか、俺まだ着替えもしてない』 急に現実に引き戻されて、慌てる。 金額は払ってあるから、退室はゆっくり着替えてから、俺だけ後で出れば良いや。 と思い至って、とりあえずはと、メガネを外し、洸太の近くへと移動する。 「これ、」 洸太の掌にメガネを添えようと手を伸ばす。 顔は、怖くて見れない。 手、震えててカッコ悪… 指先が洸太の手に触れた瞬間、メガネごと手を握られる。 「ぁ、の」 見上げた洸太の顔は、口唇を塞がれて、見えなくなってしまった。 「ごめ…」 洸太の震える口唇が、俺の口唇を開放しても、顔の距離はそのままに、謝罪の言葉だけを伝える。 息の掛かるほど近距離なままなのは、表情を隠すためなのだろうか? 「何が?」 洸太が謝る事なんて、何一つ無いのに。 「友弥が、寝てる間に、色々考えてた」 ゆっくり、ゆっくり、言葉を紡ぐ。 考えながら、言葉を選ぶみたいに 手は、両手を握られて、メガネはとっくに落としてしまった。 「えっと、今日、あの場所に行ったのは、 仕事帰りの12時半頃だったんだ」 なんだか懺悔するみたいに、 目は閉じられたまま 「で、友弥が来るまでに、2、3人、来たわけ」 じゃ、その人達ともヤッたって事? そういう場所だもんね。 元気だね、おじさん。 「だけど、なんだかそういう気になれなくて」 あ。行かなかったんだ 「と、言うより俺、あそこを使うの、辞めようと、思ってたんだ、今日で 最後にしようって。」 そっか。 じゃ、俺達の出逢いも、今日を逃したら もしかしたら無かったかもしんないのか 「んで、今度こそ、ちゃんと付き合って行ける恋人を、真面目に探そうと、ぉも…」 あ、れ? 「洸…太?」 顔を、覗き込もう、と思ったら、今度は抱き締められた。 これじゃ本当に、顔が見えない、じゃん。 「こんな、出逢い方だけど、俺 友弥が、ス… キ、 に、なっちゃったんだ。」 ピッタリくっついた胸が、鼓動を伝える。 バクバクいってる鼓動は、俺の?洸太の? どっちのなんだろう? 「俺、マジだから。 友弥が、俺だけじゃ満足出来なかったら、あそこ、また利用しても良いから」 んんん? あ。洸太、誤解して… 「身体は、俺だけの物になんなくても」 「や。洸太、あのさ」 「心だけは、俺の物になってくれー!!!!」 ギュギュギュッ!! て、力一杯抱き締めるから、誤解を解く前につい、 幸せに、浸ってしまった・・・ 返答は、イワズモガナ。 まだ残ってた時間いっぱいいっぱいまで、またセックスをして、ケー番と、ID交換もして。 夕方だからディナーでも食べに行こう。て誘われたけど、俺が飯を作るからと言って、食材買いながら洸太の家に帰って、夕飯食べて、 またセックスして。 こんな幸せが訪れるなんて。 幸せすぎて怖いけど。 怖くなったら、また セックスすれば、 肌に触れれば 忘れられる。 だって俺達は、 “特別“だから

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