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第53話 欲情と相手

「皐月から誘ったの?」 怒りに満ちた菫の薄緑色の瞳は恐ろしいほど綺麗で、暫くその瞳に吸い取られるように躰が動かなかった。 「……そ……そぅ……ぁっ……!」 「やっぱり、知りたくないな」 言いかけて、菫は唇を合わせた。 じっとりと濡れた下着の感触と、顎から滴る唾液を感じながらゆっくりと菫の太い頸に回した手を離そうすると、強い力で後頭部を抑えられ深く舌が侵入する。 「……んッ……あお……」 抑えられたまま長い舌が口腔を蹂躙し続けると、菫は胸の突起を弄り爪で抓った。 「こんなこと、葉月が悲しむね……」 頭を強い力で固定され息が出ないほど口腔内を貪られたかと思うと一旦唇が離れ、菫は耳元で低く甘く囁いた。 「……ッ……ごめんなさ……ッァ……」 目尻に涙が溜まり、顔を背けようとするが顎を掴まれまた深いキスをされた。 「それに、僕は今まであんな風に求められた事なんてない。君は桐生君には酷く乱れた姿をするんだね……」 菫はそう言って耳朶を甘噛みすると、耳を舐め首筋を舌で這うように舐めた。横になって向かい合っていた躰は仰向けにされ、逃げられないように菫は体重を乗せてのしかかった。 風呂に入ったせいでシャツを着るのを忘れたのか、浴衣がはだけて白い愛元から赤い鬱血痕が灯光に照らされるのが見えた。 菫はそれを見ると眉を潜めて、重ねるように強く何度も吸った。 「……ァッ……」 昨夜乱れた醜態を思い出して、躰がさらに火照ってしまう。 「この痕も…桐生くんがつけたんだろう…?」 菫はそう言って、低く冷たく言うとさらに強く吸い付いて噛んだ。 「……はぁっ……!!」 悦楽と刺激が入り混じり、躰が反応した。 菫の汗ばむ身体が重たくのしかかり、全身が縫い止められているようで逃げ場がなく、躰がびくとも動かなかった。 足先と躰だけが、菫から与えられる愛撫にぴくぴくと反応して逃げる事も許されずまるで罰を与えられているように感じる。 だが躰は対照的に厭らしく反応し続け、股間の先端からは段々とぬるついていき下着を濡らすのが分かり、ガクガクと内腿が震えた。 「……ずっと大切にしてたのに」 菫はそう呟いて、片手で両手を拘束し露わになった胸の突起を吸って長い舌先で尖った先を口腔内で転がす。 「……ッぁ……」 「皐月、人のものに手を出すのは駄目だよ」 「……ッ……ァ……!」 まるで罰するように突起を強く噛まれた。 菫の顔はいつもの戯けた顔はなく、真剣で汗ばんだ雄の顔をしていた。桐生とは違い、雄々しく妖艶でこんな色男に押し倒されて、拒む事もできずに首を微かに振った。 「……ごめ……んなさ……」 必死に逃げようと拒むが菫は許す事もせず、またキスを繰り返した。 「そうだね、反省してるなら桐生くんに抱かれた事を葉月に言ってもいい?」 菫は普段と変わらない優しい声に戻り、微笑み反して自分は懸命に涙を溜めて頸を振った。 「……やッ……それは……いや……だ……」 必死に頸をふると、菫は溜息をついて躰を撫でだ。 そして長い指先を下へ下ろして行き、ぬるついた先端を撫でるとその体液を指に塗りつけて、ヒクついている窄まりにも塗った。 そのまま後孔の入口をなぞってゆっくりと指を入れた。 「よく濡れてるね」 ぬるついた指が中から蠢いて、唇を合わせられた。 「……ッァ……」 「ぷっくり腫れて緩んでるよ」 「やめ……」 頸を背けて、与えられる悦楽に支配されてしまいそうだった。このまま何も考えずに菫に抱かれ、身を身委ねてしまいそうになる。 「皐月、嫌なら抱かれて」 蒼は優しく微笑んで、じっと皐月を見下ろした。その顔は普段と同じ穏やかな菫だった。

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