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第55話 後悔の朝

あれから菫に何度も激しく抱かれ、嫌がって抵抗するとさらに押さえ付けられて何度も絶頂に達せさせられた。 自分で達する事も許してくれず、ただ菫から与えられる悦楽に酔いしれて支配された。 菫は滴るお互いの体液が混ざり合った太腿を重ね、何度も強く唇を重ねると貪るように後孔を突いた。 そしてやっと行為が終わり、早朝に眠りについた蒼を横で確認すると、逃げるように現金を置いて宿を出た。 荷物もそのまま、着替えると財布だけ握り締めて出ていき、走ってきたタクシーに乗りこんでそのまま眠って気づいたら自宅に着いていた。 タクシー料金が恐ろしかったが、それよりも節々の痛みは増して鈍痛が躰全体を襲い意識も疲れ果ててどうでも良かった。 桐生とは違うが、優しくゆっくりと支配されて何度も凌駕されたが菫の表情は冷淡で、冷然たるものだった。 ただただ与えられる快感に酔いしれそうになり、堪えてもまたその波は何度も襲ってきた。 一昨日の記憶を上書きするような愛撫を思い出しながら、車の振動に揺られて寝た。 やっと辿り着いた自宅は誰もおらず、桐生も居らず、寝室に行くと乱れたシーツだけ目につき、まるで桐生との情事と菫の情事を象徴するように残されていた。 そして一昨日から寝不足のせいか、倒れるようにそのまま乱れたシーツの上で眠った。 夢の中で懸命に誰かに謝っていた。 桐生を利用して、蒼を怒らせた。 蒼の怒りを買い、ふしだらな自分はなんて事をしたんだろう。 関係ない葉月まで巻き込んでしまい、人の幸せを奪う大きな過ちをしたと今更ながら自分がした事を恥じて思い知った。 微かな物音で、ぼんやりと瞼を開くと目の前には朝横で眠っていた菫がいて飛び起きた。 「ごめん、荷物をもってきたよ」 あまりの予想外の光景に目を見張って怯えた。 菫は忘れてきた旅行鞄を横に置き、腰を落としていた。 丁度そこは桐生の布団が一昨日まで敷いていた場所だった。 「……すみません、ありがとうございます」 「どうして急に帰るの?」 「……仕事が……」 そう答えようとすると、菫はそっと近づいて顎を掴むと顔を寄せ唇を重ねた。 「そう、またここでする?」 蒼は寝ている躰を押し潰すようにのってくると、服を弄り胸の突起をつねった。 「……ッ……!」 「ここで、桐生くんとしたんだよね」 そう呟いて、桐生の名を出されるとろくに抵抗もできずに縫い止められて、菫の言われるまま従いそのままそこで何度もまた抱かれた。 それは逃げ場を失って、罰を受けている感覚だった。

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