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第一章 再会 四
思わず誠は声を上げた。二人が驚いた顔で誠の方を向く。
「色々あったかもしれないですけど、でも、貢はなにも悪くないのに施設だなんて……」
「それじゃほかに何かいい方法でもあるの?」
益美が心底疲れた様子で誠を責めるような視線を向けた。彼女たちの気持も痛いほどわかる、わかるからこそ、自分にできることと言ったら。
「おっ、俺がひきとります!」
誠の中でも葛藤があり、時間のない中で悩んで悩んで決めたようだ。
貢は突然の彼の申し出に心底驚いたようだ。目を一瞬だが見開いた。
誠も言った手前もう引き下がれない。
「僕がひきとります!」
「いや、でももう早坂とは縁もないあなたに頼むのは申し訳ないよ」
「僕は独り身で普通に働いていますから、問題ありません」
伯父さんは深くなった眉間の皺をより一層深くして伯母さんと互いに顔を見合わせる。
こころなし申し訳ないような複雑な表情で互いに頷いた。
もう策がないうえの苦肉の納得でもあるようだ。
「すまない誠さん」
二人はふかぶかと頭を下げる。
「大丈夫ですよ、彼一人くらい。あと一年と半年くらいで高校も卒業して、そう、本人が望むのなら大学にも行かせてあげたい。とにかく自立できるようにしてあげたい」
「誠さん、貢が可哀想な子だってことは私たちもよくわかっている。私達の父親があんな風に借金を抱えて周りに迷惑をかけなければ、そしてそれを兄の武彦が負わなければ、彼の母親も逃げることはなかったし、私らもこんなに追い詰められることはなかったんだ」
益美伯母さんは心底苦しそうな顔で僕らを見た。
誠の妻の兄、ようするに誠にとっての義理のお兄さんにそんな厄介な事があったとは知らなかった。
たった一人の妹、誠の妻に最後まで迷惑をかけたくはなかったのだろう。
妻、加奈子からは兄が借金をしているなんて話は聞いたこともなかった。
一台のシンプルな黒塗りの車が火葬場まで進んでいく。
最近の霊柩車は昔と違い、派手な色合いのものというよりも落ち着いた色で、形も普通の乗用車と変わらないものが主流になりつつある。
その夜、葬式もなんとか無事に終わった。
親一人子一人だった家に貢を一人置いておく訳にもいかない。
納骨まで誠は自分の家に貢を遺骨と共に連れて行くことにした。
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