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第一章 再会 三

「本当に申し訳ないんだけどね。うちは子供を4人養っている」 「うちの親父のせいで兄が借金の肩代わりをして働いてね。それでも私らも幾度か協力したんだけど。あんなになってしまってはもう焼き石に水なのさ」  伯母の益美もため息交じりで呟いた。  顔も疲れていて時折乱れた髪の毛をかきあげる。 「益美姉さんの所でなんとかならないのか?」  達治が益美に頼み込むように言う。 「何言ってるのよ! うちは共働きなのよ、うちにだってまだ高校生が2人いるし、ただでさえ今家計は火の車なのに」 「……貢はどうなるんですか?」  誠は事態に慌て、そこにいる親戚に問いかけた。  二人を責める気にはなれない。彼らは彼らなりに父親の借金のケアや、それを背負う事になってしまった兄の武彦にも再三助け舟をだしたというし。何度も話し合い、互いにもう限界がきてしまったようだ。 「心苦しいのだが彼は児童施設に……」  姉も少しの間だからと止むを得ないという感じで眉間に皺を寄せため息をついた。 「施設暮らし……可哀想だけどそういうことになってしまうわね……」  二人は疲れ果てた様子で結論をそのような形で出さざるを得なかった。  そのまま貢のところへ行き事情を説明すると、貢は口元をぎゅっと引き結んで俯いた。  その淋しげな表情を見たら誠の動悸が激しくなる。 「それでね。突然で悪いけどね、貢君、いま君たちが住んでるあの家に君はいられなくなるんだよ」 「えっ」  貢は驚いて顔を上げた。 「子供のあんたにいうことじゃないかもしれないけどね。あんたの父親は親父の借金背負って、この家も抵当に入ってたのさ。あんたもあと半年ほどで卒業だろ、それまで悪いけどねしかるべき施設に行くしかないのね」  貢は家が抵当に入っているということにショックを受け、自分が親戚のどこにも行く場所がないということを悟り、 不安を隠し切れない様子だった。 「葬式までは待ってもらったんだけど、明日までに自分の大事な荷物だけまとめておいてね」  貢の意思はもはや関係ないようだった。子供というのは親が亡くなると何も手立てがない。  それは彼でも亡くなった彼の父親のせいでもない。 「伯父さん伯母さん待ってください!」

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