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第一章 再会 九
「どうした? 寝巻きに着替えないのか?」
返事はなかったが、隣でカバンの中を漁っている音が聞こえる。
何も隣の部屋で着替えなくてもいいのにな。
自分の体を見せたくないほど嫌なら仕方ない。やりにくいな。
いつもは面倒で下着のまま寝る誠だが流石に今日は上にシャツを着て寝ることにした。
誠が雑誌を読みながらベッドに入っているとなかなか貢はやってこない。
どうしたのだろうかとそっと隣の部屋の障子を叩いてみる。
開いてみると、畳の上に貢はむこうを向いて横になっていた。
「おい……」
近づくと既に貢は規則正しい呼吸で眠っていた。そうまでして誠に近づきたくないのはわかったが、余程疲れていたのだろう。
こんなことなら座布団でもいいから敷いてやればよかったと誠はため息をついた。
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