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第一章 高貴な遺伝子 五
「二世紀前の戦争は4、5発の核が地球の形だけでなく環境そのものを変えた。そして地下のもっとも深いシェルターに逃れられた人間はしばらく長い間、地下での生活を強いられた。ミュータントの根絶と核で汚れた地上が浄化されるのを待つために……」
しかしこの状況や戦争はある時期よりすでに予想されていたとも言われている。
シェルターの役割はただ避難するための場所というよりも、割り切りをもった科学者たちが英知を集め、生きていくために備えた施設になっていた。
「スモールヌクリア(小さな核)を開発した先人に感謝しないとな」
その頃には核戦争のために太陽光と同じエネルギーや光を生み出すスモールヌクリアなるものを開発することができていた。
それが地下での生活に生かされたのだ。
そしてノアの箱舟ならぬ、ノアの地下施設なるものが開発される。そこは人間が生き延びていくのに必要なありとあらゆる植物、生物がスモールヌクリアと共に備えられたものだった。
スモールヌクリアは自家発電だけにとどまらず、燦々たるありさまとなった地上から放出された害になる放射能を取り込むことで、地上を浄化することもできた。エネルギーで作物は育ち、家畜も育てられたため、人間はそこで過ごすことができた。
地下の住人の生活のために最大限に生かせた施設は、科学者たちの研究成果を存分に発揮するものとなった。
「結局俺たち人類が自分自身を守った」
琉は柔らかく微笑みながら応えると、俺も腕を組みながら頷いた。
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