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第一章 高貴な遺伝子 七
「カミーユ彼氏できたんだって?」
授業が終わってから何人かの生徒が興味を示したように彼の周りに集まってきた。
「どこで捕まえたんだよ」
「……いやぁ……」
カミーユはまぁまぁとばかり遠慮がちにでも少し嬉しそうな表情を見せる。
「俺、お前とその彼氏がノースエリアでデートしてたのを見たぜ」
彼の一言で辺りがざわめく。
けれど、それは如何にも普通にどこでもありそうな羨ましげな空気にも感じ、俺の心がトゲトゲしくなってくる。俺がもっとも苦手とする空気だ。
「相手はもしかしてオメガ種なのか?」
別のクラスでの友達らしく彼の問いかけにカミーユはうなずいた。
やっぱりだ。
俺にはとても理解できない。相手がどんな人間でもいいとしている学校の仲間に、時々ついて行けなくなるときがある。
「相手がオメガとか、そんなんどうでもいいじゃないか、カミーユ。良かったな」
クラスの中でもベータ同士でつるみ、そのリーダー的存在の織崎克己が嬉しそうにカミーユの肩に手を乗せた。
今思うとこの織崎って奴が以前俺がノースエリア中央都市大学の付属高校に行ったときに合った黒髪ザンギリ頭の男の弟だったのだ。
彼は後から編入してきた。
恐らく俺の話は兄から聞いていたのだろう、彼の俺との相性は出会った時からあまり良くはなかった。
「俺には全くあり得ないことだけどな、まぁ相手がベータならまだ普通の人間だからいいが、カミーユはどうかしてるぜ」
俺の言葉に織崎が視線を向け睨んだ。
「何がだよ、むしろお前のオメガを人間扱いしてない態度に俺は引くけどな」
「何言ってるんだよ、お前だって自分がベータでまだ良かったと思ってるだろ? だからこちらの学校にも編入できたんだ」
「なんだと!」
「まぁ、まぁ、アヤト、お前も少し言い過ぎだ」
俺は間に割って入って来る琉の言葉を無視すると、次の教室に行くために立ち上がり、足早に廊下に出た。
すぐに琉が俺の後をついてくる。
「いいのか、カミーユの話を聞かなくて、お前だって興味がないわけじゃないんだろ?」
「いや、俺は別に……」
「ふぅん、お前もオメガに興味がある人間だと思ってたよ。最近やけに肩を持つようになってきてるしな。ま、俺には関係ないけど」
「……別にオメガがどうかとかいうことじゃない。それに織崎だって、お前が思ってるようなことは考えてなかったはずだ。俺と同様カミーユに好きな人ができたことに友達として素直に喜んでいるだけだ」
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