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第七章 抗えないオメガの運命と…… 二
「それはお前が古来より伝わるつがいになるオメガだからだ……」
背中越しに聞き覚えのある声がし、俺は全身の毛が逆立つような気持ちになった。
そこにはスーツを着た沼間が立っていた。
「お前をオメガのままにしておくと危険だと察したからだ。ある意味この世に出ては秩序を乱すだけの化石的存在だからな、お前は」
「……そんな」
「わしも性欲を抑える薬を飲んでおるぞ。もう大人になったお前ならいくらでもわしの子を産んでいい。そう思ったからそろそろお前の本性も現実もわかった方がいいだろうと思ったんだ……」
「何が現実だよ、冗談じゃない、俺は嫌だ、認めない。お、俺がオメガってことはもう仕方ないにせよ、お前なんかに操られてたなんてこと!」
「お前と俺がつがいであることもか?」
その言葉で俺は怒りが体中から湧きあがる。
「それが一番許せねぇ! だ、誰がお前なんかと!」
「運命には逆らえない……。むしろ本来あるべきのところに戻るだけだ。お前が自分がオメガだと自覚できればあとは狂ったように俺の子を産み続ける人生が待っている」
「嫌だ、そんなの絶対に嫌だ!」
「古藪、エムル、もうこいつに薬を与える必要はない。今からわしの屋敷に連れて帰る……そうだなぁ……。性欲抑制薬だけはもらっておくか、いつまでもねだられてもこっちの身がもたんしなぁ……」
に、逃げなきゃ……。
そう思った瞬間俺の目の前をエムルが庇うように前に出た。
「だめです、アヤトさんが嫌がってます。辛そうな顔をしています。彼が幸せになれないのなら私はそれを賛成できません!」
「黙れ、人形風情が……」
「アヤトさん、逃げてください、ここはワタシが!」
俺はすぐに出口に向かった。護衛のアンドロイドがいるはずだ。
ところが俺が外に出ると奴は倒れて折れた腕から煙をあげていた。
「……!」
そこにはorder police corpsの湯田と久下が立っていた。
「アヤトちゃん久しぶりだな、このまま沼間教授のところに大人しくいかないと、逮捕しちゃうぞ」
そういいながらヘラヘラ笑った。
(こいつらやっぱりグルだったのか……!)
俺は彼らに腕を掴まれた。
「やめろ! 嫌だ……」
(もう駄目なのか、俺は沼間のいいなりになってしまうのか……た、助けてくれ……助けて……。琉……)
不意に目の前の男たちが悲鳴をあげた。
ふわっと上空から湯田たちを蹴りつぶした人影が舞う。
「琉……」
「アヤト、お前……!」
助けてくれたはずの琉が額の皺を深くして目を吊り上げていた。
「何勝手に一人で行動してるんだ! 一緒に解決するんじゃなかったのか!」
琉のいつにない剣幕に俺は思わず身を縮ませた。
「ごめっ……」
謝った瞬間に彼の力強い腕に息もつけないほど抱きしめられていた。
「死ぬほど心配したんだぞ、馬鹿野郎!」
「琉……」
「もう勝手にどこかに行かないでくれ……」
その力強さと1日しか離れてなかったはずなのに、懐かしい匂いに俺は思わず目頭が熱くなった。
上空に翼を広げていたサエカは俺たちに叫んだ。
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