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第七章 抗えないオメガの運命と…… 四

「う……」  目が覚めると床が沈んでいるようだった。そこはやけにふっかりとしている。  顔が半分うつぶせ状態で、体を動かそうと思ったが上手く動かせない。どうやら手を後ろ手に縛られているようだった。  上半身をなんとか起こすと、そこは広いベッドだった。  あれから一体どれくらいの時間が流れたのだろう……。はっきりと覚えていない。  俺自身の体がじわじわとさっきから熱い。 「薬を断ってからもう丸一日は経つ……ここが今日から君の部屋になるよ」  聞き覚えのある耳障りな声に俺ははっとして振り返ると、そこにはいつもは白衣かスーツを着ている沼間が、今はリラックスした部屋着で椅子にもたれくつろいでいた。 「冗談じゃない!」  俺はベッドから降りようとして、思わず床に転がってしまった。 「この部屋はお風呂もついてるし、ちょっとしたプライベートルームになっている。お前はここで何不自由なく、生活できるんだ。ベビーが生まれたら、この屋敷にはお手伝いさんも沢山いるから安心だよ」  不気味な笑顔を見せる沼間に俺は戦慄が走った。 「ふ、ふざけるな、お、俺をここで飼い殺しにでもするつもりか?!」  叫んだ俺にずしずしと近づいてきた沼間はスリッパを穿いたままの足で思い切り俺の背中を踏みつけた。 「ぐっ!」 「あまり生意気な口はきかない方がいいな、お前は俺に媚びなければ生きては行けなくなるのだからな。お前をここに閉じ込めておけば自然に薬の効き目が切れて本来のお前の本性が現れる……お前が俺に腰を振りながら喜びせがむ姿が楽しみだよ」 「嫌だ、家に帰らせてくれ」 「何を言ってる。ここがこれからはお前の家だ。お前の両親からもよろしく頼むと言われた」 「……! そ、そんな……」 「と言ってもお前の親はお前をずっとアルファであると言う風に世間に偽っていたわけだからな。order police corpsが目を光らせている限りは、火星に逃亡しているしかなくなったわけだ」 「うっ、ううっ……! するいぞ、お前はorder police corpsとグルな癖に……!」  俺は情けないことに目の前が滲んで悲しくなった。 「琉はどこだ? 琉に会わせてくれ……」 「ふん、あんな奴のことなど、もう忘れろ」 「嫌だ、琉に……琉に会いたい……。お願いだ……」 「ふん、あいつと関わったところで何もメリットがない。さっさと忘れろ。俺は優秀なアルファだ。地位も名誉もある。お前には不自由はさせないさ……わしに溺れたらいい」 「メリットとかデメリットとかそんなのもどうでもいい……琉に……」 「煩い! アルファの俺とオメガのお前がつがいなんだ。お前は俺だけを見てればいい!」 「琉……」  その名前を口にしただけで、俺は後から後から涙が溢れて止まらなかった。ずっと傍にいてくれた。いつでも俺を温かな目で見守ってくれた。でも今は……その琉が傍にいないことが嘘みたいに寂しくて、苦しくて……。  俺がこんなにおかしくなったのは薬を絶たれたからなのだろうか。   「ちっ……。あいつは長く生かしすぎてしまったか」 「……何を言ってるんだ?」 「わしの力があれば宝田琉などどうにでもできる。奴は特殊なアルファだ。だからこそ暴走させればいつでも逮捕させることもできる」 「……そんな……!」 「宝田が逮捕されればもう二度とお前に会うことも叶わないだろう」

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