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第1話
今日もネオンの光が眩しくて、思わず目を細める。
電力の無駄だなーと思いつつ、いつもの通りを抜けて駅に向かう。
急いでいるのに目を奪われた。
茶髪で少し色素の薄い瞳、長い睫毛に白い肌、
ベージュのトップスに黒のパンツがマッチしている男。
凄く目立つ彼は苛立ちを隠そうともせず、改札前の壁に寄りかかっていた。好みが全部詰まった容姿。
なんとなく気になり近くに歩み寄る。
一歩一歩近づくたびに、不機嫌そうなオーラが強まる。なんだか楽しくなって腕に触れてみる。
「ねぇ、お兄さん」
予想はしていたけど返事はなかった。
早く退けという態度を無視してもっと近くに行く。
「お兄さんいま暇?」
「……」
「はぁ。構ってくれないなら目立つように大声でも出しちゃおっかな」
ため息が聞こえたあと、彼はスマホから目を離し、やっと目線をあわせてくれた。
非の打ち所がない見た目。
なんだか無性にイライラした。
「早く散れ」
あぁ、きっと彼はαなんだろうな。
肌にピリピリと圧を感じる。
いままでαにたくさん接してきたから、それほどのことでは怖気付かない。
「釣れないなぁ。ね、いいことしない?」
さっきホテルから出てきたばっかりだけど、こんな上等を見ては我慢できなかった。
よく褒められる上目遣いを駆使したものの、彼は嫌悪感を強くし、伸ばした手を容赦なく叩き落とした。
「ビッチに用はない」
「お兄さん容赦なーい」
そんな会話をしているうちに、彼の携帯電波が音を立てる。
さっきの冷たさはどこへやら、ヘラヘラした顔で電話相手と話している。
なんだかムカついてそっと近づいて、彼のワイシャツのボタンの1番上を外す。
「!?…なんでもない」
彼は焦った様子で俺を離そうとするけど、携帯電話を落とさないように気をつけるのに精一杯であしらえずにいた。
そして……
「…ッツ!」
首に唇を寄せ軽くリップ音をさせてキスマークをつけて満足して改札に向かう。
彼の驚く顔が可愛くて、ギャップにもっと惹かれてしまったが、そろそろ電車に乗らないといけない。
「おい、待っ…違う、そうじゃなくて」
彼は電話を切ることができないらしく、満員電車に飛び込んだ。
いたずらが成功したようで、嬉しくて思わず笑ってしまった。
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