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第6話

ダンボールに入っていた本は見事に全て海の背中に着地してる。まさか庇われるなんて思ってもいなかったので、驚きが止まらない。 「怪我は?」 腰あたりを擦りながら立ち上がり僕に目を向ける。 「いや、大丈夫。…海は?」 「別に平気。」 そして、 「どんくさ。」 と鼻で笑いながら部屋を出ていった。 …ん?え?なんだ?本当になんだ?昨日から海に振り回されっぱなしではないか?と思うとため息がもれる。 その日の晩も、両親の買い物中の出来事などを聞きつつも海の事が気になって仕方なかった。振り回されていたり弄ばれてるような気もするが、庇ってもらったのにお礼を言っていない…。そればかりが頭をぐるぐる駆け巡る。 「それでねお父さんが…」 「新商品が出ていていたんだよ…」 楽しそうなふたりの会話も一切耳に入ってこずに曖昧な相槌しか取れない。表情も合わせて笑ってみてはいるがわざとらしいに違いない。このままの変な態度では心配されてしまいそうだし、一旦落ち着くために風呂に入ることにした。薄暗い廊下を抜けて脱衣場の戸を開ける。 「「あ。」」 同時に声が漏れる。そして咄嗟に戸を閉めた。中に居たのは半裸で髪の毛をバスタオルで乾かしている、今1番会いたくない奴だ。こんな広い家でなんで会うんだ。 とりあえずリビングにでも戻るかと背を向けた瞬間、閉めたはずの扉が少し開かれて、海がひょっこりと顔を出す。 「もう出たからどうぞ〜。あ、それとも俺の裸に興奮しちゃった?」 ヘラヘラしながら腹ただしいことを言ってくる海にさっきまで散々悩んでいた自分が馬鹿らしく思えてくる。 「んなわけあるか!早く出ろ!」 扉を勢いよく前回に開き腕を引っ張り脱衣場から追い出す。 「はいはい、もう出ますって〜」 海は僕の手を軽く振り払い脱衣場から出ていった。彼の背中を眺めつつ 「あ。」 露になった背中に青紫色に痣になっている箇所を見つけてつい声が漏れる。薄暗い廊下にいても分かるほどその痣はくっきりとしている。 「なぁ…その背中…さっきの本のせい…だよな…」 絶対にそうだ。本の角が背中に当たったからに違いない。僕なんかを庇ったから… 「あの…ごめん。」 罪悪感で前を向くことが出来ない。海がゆっくり歩み寄ってくるのが伝わってくる。つい身構えてしまう。 「…深月がキスしてくれたら…許してあげる」 そう耳元で囁かれ咄嗟に海の方を向く。さっきからの冗談だろう。そう思ったが、彼の顔はどこか本気のようだった。

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