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はじめて恋をしたのは、14歳の夏。好きな人とか、恋人とか、正直周りに流されていたこともあると思う。周りでは好きな人の話をするやつらが増えていたし、恋人ができたとか、キスをしたとか、そんな話で夏休み明けの教室は持ちきりだった。
「和都 は好きなやつとかいるの?」
ふと訪ねてきたのは中学からの友人、水野悟 だった。
「え、いないけど……。悟は?」
「俺もいないなあ……。好きな奴って言われてもピンとこねえし、ほら、花房 とかは可愛いと思うけど……」
好きと可愛いは違うよな、なんて笑う悟だったけど、あいつは結局数日後に花房さんに告白されて付き合っていた。そんな周りの変化についていけなくて、正直悩んでいた俺は兄の親友であり、幼馴染の美琴朝陽 さんに相談を持ち掛けた。今となっては、何故兄の優李 に最初に声をかけなかったのだろうと思う。好きなやつがいない、恋人が出来ないのはおかしいことなのか、そう尋ねたときに「和都のペースでいい、いつか好きな奴もできて幸せになれる。俺はそう願ってるよ」なんて言いながらポンと撫でられたあの感触を、今でもずっと覚えている。彼に対して恋心を自覚する、ほんの三日前の話。
――――――
「ピピピ」という電子音で目を覚ます。どうやら夢を見ていたようだ。
「……目覚め、最悪」
ぼそりと呟けばため息をつき時計を確認するともう準備して出かけなければ授業に間に合わない時間。気持ちから重たい体を引きずるように起こし適当に着替えると、脱いだパジャマはそのままに、学校へと向かった。
「よ、朝から辛気臭い顔しやがって、どうした?」
「……日向 」
里見日向 は小学校からの親友。恋人いない歴イコール年齢の俺とは違い、常に彼女の切れないモテ男だ。
「別に……夢見悪くて寝不足って言うか……」
「おー?寝不足は美容に悪いぞ?」
「女子か」
「男でも美容は大切だぞー?ヨボヨボのじーさんになんかなりたくねえだろ?」
日向のおどけた様子を見て少し頭が切り替わって、なんとか普通のテンションで授業を受けることが出来たけれど、俺の頭の中は思い出された恋心でいっぱいだった。
中学2年のあの夏、あの日相談を持ち掛けた幼馴染の朝陽さんはすごく優しくてカッコイイ。それこそ、テレビに出てくる俳優やアイドルの様に容姿端麗。高校に進学するとともに逃げるように都会の寮制の学校を選んで家を飛び出し、それ以来まともに顔を合わせていないけれど、もしかしたら日向の様に彼女の切れないような生活を送っているのかもしれない。
「……あー……」
思い出して再びブル―になっていると、日向からとんとんと肩を叩かれる。
「どうした?なんか悩み事か?」
「…………思い出して落ち込んでるだけ」
授業中だぞ。と短く返すとそのままボードへと視線を移す。講義の内容なんてもちろん頭になんか入ってこなかった。
「和都、この後暇?」
「え、うん」
「じゃあさ、合コンいこーぜ!数合わせでいいから!」
「え……やだよ」
授業終わり、日向は遊びに誘ってきた。それも合コン。お前、彼女いるんじゃないのか。
「いいから。悩み事で顔色悪くぼーっとしてる親友のことほっとけるわけないだろ」
「…………わかったよ」
「よし!決まりな!じゃあ●●駅前の……」
丸めこまれて、俺は合コンに参加することになったのだった。
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