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デニッシュ・メアリー ――あなたの心が見えない 7
建樹の反応がよほど嬉しかったのか、一耶はしばらくそこを攻めていたが、彼自身、堪えきれなくなっているのが伝わってきた。
「おいで」
建樹は年下の相手を促し、交わりやすいように体勢を変えた。
薄暗いその場所に甘く切ない声が響き、淡い光が二つの影を落とす。誰にも知られはしない、彼らだけの秘め事は続いた。
建樹に包み込まれた一耶は恍惚としながら掻き回すように腰を動かした。
「建樹の中……すごくいい」
恒星にも絶賛されたそこが一耶を締めつけにかかる。
「こんなに、なんて……」
一耶の方が先に音を上げた。
「ダメだ、オレ、終わっちゃう」
一度果ててしまったものの、すぐさま復活した一耶と再び交わりながら、建樹は自分の身体に染みついた存在を打ち消そうとした。
「……もっと、もっと強く……もっと」
熱に浮かされたように、建樹は大胆な言葉を次々と口にし、一耶を驚かせた。
──昇りつめたあとの、興奮冷めやらぬ身体から次第に汗が引いてゆく。
建樹を抱いたまま、一耶は「今のオレ、最低だけど最高」と口にした。
「それって……」
「貴方を満足させられない自分が情けない。けれど、こうやって抱き合えたこと、とっても嬉しいんだ」
一耶のセリフを遠くで聞きながら、建樹は別の面影を思い浮かべていた。
ムスクの香り、黒い服、黒い髪。あれは一夜限りの出来事、もう二度と会わないと自分に誓った、なのに………忘れられない……
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