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オールド・パル ――想いを叶えて 7

 こんな感覚はこれまでで初めてかもしれない。良すぎておかしくなるかも、建樹は気を失いそうになりながら、ひたすら喘いだ。 「はうっん、あっ、ああっ!」 「建樹、オレの建樹……」  激しい抱擁と口づけの嵐、うわ言のように一耶は建樹の名前を呼んだ。  海辺の宵闇の中建樹は何度も一耶を求め、一耶もそれに応じて、二人は飽きることなく抱き合い続けた。  そんな情熱の時が過ぎ去ると、あまりの激しさからか、建樹は一耶に身体を預けたままぐったりとしてしまった。 「ど、どうしたの? オレのせい?」  心配そうに覗き込む顔を見て、大丈夫だというように首を振る。 「一耶に出会えて……本当に良かった」  青白い光に照らされて、二つの影がうっすらと伸び、打ち寄せる波の音はいつまでも静かに響く。  建樹の肩を優しく抱くと、一耶は幸せそうに、それでいて少し不安げに訊いた。 「これで建樹の丸ごと全部、オレのもの、だよね?」 「今は、ね」  それはないよと唇を尖らせる一耶に、建樹は謎めいた微笑みを浮かべた。 「人生はルーレットゲームだからさ」                               〈THE END〉

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