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第19話 初めてのデート 視点:昴

飛鳥が電車に乗りこんで1分もしないうちに自分たちが待っていた電車がホームへとやってきた。京一の手をしっかりと握ると京一は背が高いために合わせにくい視線を、首を傾げるようにして視線を合わせる。その仕草がなんだか可愛らしく見えて思わず顔が緩んでしまう。 体だけの関係なら何度か経験はあったものの、生まれて初めての恋人に多少浮かれているのを昴自身も自覚している。 何といっても、今まで自分が何一つとして勝ることの出来なかった飛鳥のことをずっと思い続けていた男を自分のものにできたという優越感たるや尋常ではない。 「嬉しかった……」 昴がそう呟いた言葉も、急かしたりせずじっと待ってくれる。 「付き合ってるって……言ってもらえて」 京一は言葉を1つずつ大切に受け止めてくれる人だと、この長くはない時間でも十分に感じることができた。 「俺もそれなりに覚悟を決めて付き合ってほしいって言ったつもりだったけど、あんなタイミングじゃあんまりだったよね。ごめんね」 繋いでいない方の手で優しく髪を撫でられると、心臓がむずむずする。 電車に乗っていると、周りの若い女の子たちがちらちらと京一を見ているのを感じては気持ちが高揚していく。 「どうしたの、昴くん。周りが気になる?手……離した方がいいかな?」 昴が周囲を気にしていることに気づいた京一はそう尋ねるが、実際に昴が考えていたことは全く逆のことで思わず焦ってしまう。 「ち、ちがう……」 勢いよく首を横に振ってしまい、京一は少し驚いた顔をしている。 「もっと、くっついててもいい?」 自分などが何を烏滸がましいことを言っているのかと恥ずかしくなって俯いてしまう。 だが、京一は笑うことなく優しい表情で腕を差し出す。 「どうぞ」 そんな仕草がまるで少女漫画に出てくる王子様みたいで、今まで颯馬に見ていた幻想から視界が広がったような気がした。 差し出された腕に腕を絡めると、周囲が微かに騒めいていたがそんなことはどうでもいいと思えた。 今日のデートも、京一が誘ってくれた。どこへ行きたいか尋ねられたが、友達は颯馬か飛鳥しかいなかったので遊びに行く場所すらも詳しくはなく、デートをする場所なんて殊更わからなかった。 「俺が決めてもいい?そうだな……宇宙科学館に行くのはどうかな?プラネタリウムがあるんだけど、昴くんは星とか好き?」 星が好きかといえばよくわからないが、プラネタリウムという場所は何となくロマンティックな気がしたので二つ返事で決めてしまう。 「行く、行きたい!」 朝食は早朝からやっている喫茶店で食べようと約束をしていたので、最寄り駅に着き、電車から降りて喫茶店でモーニングを2つ頼み他愛もない話をして時間をつぶす。 京一と話していると、話題の振り方が上手いのか話を続けやすくて時間が経つのはあっという間に感じた。 喫茶店から出ると、宇宙科学館に入館して展示を見て回る。宇宙については特に詳しくはなかったので解説をじっと読んでいると、それを見た京一がわかりやすく説明してくれる。 「京一さんは宇宙が好き?」 ふと思ったので尋ねてみた。 「どうだろ……元々星は飛鳥が……」 そう言いかけてしまったという顔をして言葉を噤んでしまう。 「飛鳥が何?聞かせて……」 「飛鳥が変な星座を勝手に作って遊び始めるから、ムキになって調べてるうちに宇宙のことも多少詳しくなっただけだから……よくわからないなって思って」 その話を聞いた途端、胸の中の熱がスッと引いていくような感覚がした。 そんな微妙な気持ちのままプラネタリウムの時間になり2人は並んでじっと解説を聞きながら映し出される星たちを見つめていた。 観終わると、京一はお土産コーナーに昴を連れて行き、星座の描かれたキーホルダーを2つ買い、片方を昴に差し出した。 「昴くん、もらってくれる?」 物で機嫌を直せということなのだろうかと思いムッとしてしまうが、濃淡が微かにある濃藍に白で結ばれた線が映えてわりと嫌いではないと思い、つい手を出してしまう。 「これ……何の星?」 そう尋ねると、「おうし座だよ」と教えてくれた。 「お揃いだから、どこかにつけてくれると嬉しいな」 お揃いという言葉を聞いて、今の恋人は自分なのだという後押しをもらったようでちょっと機嫌が良くなってしまう。 「ありがとう……」 「どういたしまして。……大切にしてあげてね」 夕方には京一の家まで帰ってきた2人は、昴に誘われるようにベッドの上で重なり合う。 「昴くん……帰らないといけないんだから、ダメだよ」 そう言いつつも拒否はしない京一に何を心配しているのか察する。 「汚さないようにするから……少しだけ……おねがい」 昴は仰向けになっている京一の上で体勢を変える。頭を京一のモノの方へ向けてさわさわと撫でながらそれを包み隠しているものを剥いでいく。少し勃ち上がっている頭を口に含むと硬度が増すのを咥内で感じた。 「おっひふなった……」 「まっ……て、咥えたまま話さないで……」 息が上がっている声が下から聞こえてきて嬉しくなってしまう。 気持ちよさそうに漏れる声をもっと聞きたくて、舌で撫でたり、吸ったり何度か京一にした時の反応を思い出しながら奉仕する。奉仕しつつも、咥内で自分も感じてしまう部分を擦ってしまうとどうしても気持ちが昂ってしまう。 「昴くん……腰が、揺れてるけど?」 そう言うと京一は昴の腰を少し浮かせさせて自分が観察しやすい位置へと誘導する。しばらく黙って見ていたかと思うと、チャックを下す音が聞こえた。 「あっ……」 パンツの上から性器を撫でられた。 「まだ何もしてないのに下着の色変わり始めてるよ?これじゃあ家に帰れなくなっちゃうんじゃない?」 京一は昴のスラックスと下着を膝まで一気に下す。 「脱いでおこうか?ほら、片膝ずつ上げてみて」 そうして器用に抜き取ると、昴の性器に触れる。 「ねえ、昴くん……少し腰を下ろすことできる?この位置で」 言われたとおりに腰を下ろすと、腰を掴まれて昴のペニスは熱い粘液に包まれた。 「あ……や、だめ……」 京一の慣れない舌使いでは本当に含んでいるだけなのだが、自分がされることが今までなかったため急な温かさに驚いて達してしまいそうになった。 なんとか波を耐えていた昴だったが、今度は後ろが疼き始める。 「きょ……ちさん、挿れ……て。もう……帰れなくてもいいから」 「ダメ……君のお母さんに、今日は早く帰すって……約束してる、から」 京一は代わりに昴の後孔に長い指をゆっくり挿入すると中をかき回していく。 「どこが気持ちいいか教えて」 「んっ……そ、こ……指まげて欲し……んんんー!!やっ」 指を曲げた瞬間に食いちぎるように締め付けられる。なるほどここかと思い、何度かそこを刺激すると、昴は嬌声とともに京一の顔に精を放った。 「あ……ごめ、なさい」 脱力しながらも謝ろうとする昴の身体を起こしてベッドの上に横にする。 「謝らなくていいよ」 京一は顔に付いた精液を手で拭って少し舐めてみる。 「やっぱり全然おいしくはないね」 ベッドから立ち上がろうとした京一のモノを見るとまだ勃ちっぱなしであることに気づいた。 「あ、京一さんまだ……イってない」 「いいよ、昴くん疲れたでしょ?」 京一が気遣うと、昴の表情が曇る。何かまた不安を感じているのだろうというのを察して、遠慮をする方が良くないのかもしれないと思い直す。 「わかった、じゃあ……手だけ貸して。それから、キスさせて」 初めてできた恋人とのデートは甘いキスとともに幕を閉じるのだった。

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