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 ズルリと、ナカからいまだ質量を保ったままの嘉納が抜き出されると、オレの体は支えを失ってリノリウムの床に突っ伏した。 「あ…… ふぅ ふ」  息が整わない。  煩いほどに鳴る心臓の音に、何処か壊れてしまったのかと思うほどだった。 「すみません、ナカに出してしまいましたね」 「っ…… え!?」  オレの顔を覗き込むのは相変わらずの仏頂面だ。  ナカと言われてもピンと来ず、荒い息のままぼんやりと嘉納を見上げた。  見下ろしていた視線が揺れ、考え込むような素振りを見せてからしゃがみ込んでくる。 「どうしました?さ、始末をしなくては……」 「……し、まつ?」 「腹痛を起こすでしょうから」 「ふくつ、う?」  脊髄はまだ快感にしびれたままで……  ぼんやりと返していると顔を覗き込まれた。  きょとんと首を捻った拍子に、腹部が圧迫されたのかトロリと後蕾から何かが流れ出す。 「───ひ……っ」  ざわざわ と悪寒が走る。  冷ややかな白いリノリウムに混ざる事のない白いモノが尻を伝って水溜まりを作っていた。 「な、な……な に?」  ソレが、嘉納がオレの体内で快感を得た証拠だと分かってはいたが、思わずすがるように視線を向けた。 「私の精液です」 「せ……せ、え……っ?」  がちん と上手く噛み合わなかった歯が舌を噛んだ。 「ええぇぇぇ……っ!?」  むぐっと声が途切れる。 「今、人に来られると面倒ですよ」  先程まで体を抱き締めていた手が口を覆い、オレはむぐむぐと声を出せずに唸るしかない。 「コンドームを付けなかったのは私のミスですから、また何かで埋め合わせします。さ、早く……」 「は、早くったって……どうやるんだ」 「は?」  珍しく間抜けに返してきた嘉納とばっちり視線が合い、お互い探るような目で見詰め合う。  情事後のせいか、赤らんだ目元がセクシーだなぁと全く関係ない事を考えていたら、嘉納が珍しく戸惑ったふうに口を開いた。 「……ナカに出しされたのは初めてですか?」 「っ!! うるせぇな!こんな……男にヤられるなんて目に遭ったのは初めてなんだよ!」  声を荒げて思わずしゃがんでいる嘉納に拳を振り下ろす。  体勢が体勢だっただけに小突く程度の筈なのに 、嘉納はどすんと尻餅を突いた。  動いた拍子にまた垂れた精液に驚いて飛び上がる。 「ぅ!? な、なぁ……コレ、どうしたら良いんだ!?」  仏頂面でこちらを見る嘉納にすがると、ゆらりとその視線が揺れた。 「  私がしてもいいなら」  そう言う嘉納にオレは思わず繰り返し頷いた。  どうしてあの時ヤられた相手に頼んだのか、興奮が醒めてからのたうつ程に後悔したが後の祭りで……  無理矢理ヤられた筈なのに自分で扱きたてて達した事や、処理と言って再び後ろを弄られて再び達してしまった事を思うと、今すぐにでもどこかの穴に埋まりたい気分になった。 「先生?具合でも?」  婦長にそう言われて慌てて首を振るも、腰とアナの痛みに顔が強張る。 「青くなったり赤くなったり無表情になったり……忙しいですねぇ」  オレの母親ほどの年齢の看護婦はそう言うとクスクスと笑った。

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