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 実は感情をよく映す目とかが……  凄く… 「あの  」  欲を埋火にしてこちらを見つめる目が…  こちらの胸を焦がす。 「その人の事が…」  男同士だとかそう言ったことはすぽんと頭から抜けて…  ただ、自覚した気持ちだけが胸の奥から滲み出してくる。 「………好きだなぁって…」  かぁっと逆上せる位に顔に赤みが指したのがわかった。  冷たいざる蕎麦を食べているはずなのに、身体中から汗が流れる。  そんなオレを微笑ましそうに見ていた院長の視線が不意に動いた。 「 ───やぁ章くん」  ひっ…と、肩が跳ねた。 「今から休憩かい?」 「……えぇ、用事を済ませていましたので」  にこやかな院長に答える嘉納に、振り返ることが出来ない。  今自分がどれ程赤いか、どんな顔をしているか分かっている。  その上で嘉納の顔を見てしまったら、壊れそうな位に鳴っている心臓が口から飛び出しそうだ。  カツリ…と真後ろまで迫った足音に、どうする?どうする?と自問自答して、思わず立ち上がった。 「っ……あのっ!検査の予約するの忘れてたんでお先に失礼します!」  思いの外大きかった声に院長がきょとんとし、背中に店の客の視線、そして戸惑うような嘉納の気配を感じる。  蕎麦はまだまだ残っていて明らかに不自然だったけれど、自分の気持ちに気付いた今、この瞬間に嘉納と同じ空間にいては平常心を保てそうになかった。 「嘉納先生!それじゃ失礼します!」  足元を見たままの視線を更に下げ、嘉納の傍らを通り抜ける。  茶色い靴がジリッと音を立ててこちらを向いたが、振り切るようにして蕎麦屋を飛び出した。  かぁっとなった頬は触ってみると案の定熱い。  こんな顔、見られてやしないだろうなぁと呻くも、ドキドキと鳴る音は止んでくれない。 「ちょ…オレ、どうなってんの」  なんなのこの乙女思考…と、蕎麦屋の駐車場で頭を抱えてそう呟いた。

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