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第5話
「ン……」
形の綺麗なファウストの薄い唇に、ルーチェのぽってりとした紅い唇が吸われる。角度を変えて何度も重ねられるそれに、ルーチェは震えた。
ファウストと接触している部分が、まるで電流でも流れているようにぴりぴりと甘く痺れる。
「はふ……」
口の中にファウストの大きな舌が滑りこんできて、あっという間にルーチェの小さな舌が絡めとられる。息をすることを忘れるほど情熱的な口づけに、ルーチェの全身が蕩けた。
口づけに夢中になりながらも、ファウストの手の平はルーチェの体のあちこちを撫で回す。腰をゆったりと下に滑り、なだらかな双丘を柔らかく揉みしだく。
「ん、……ん」
しばらくルーチェの柔らかな臀部の感触を楽しむように動かされていた手が、その谷間を滑り、奥の固く閉ざされた場所へと辿り着く。ファウストの指先が秘めやかなそこへ触れると、ルーチェはびくりと体を震わせた。
「んっ、んん」
乾いていたその場所は、ファウストが触れた途端柔らかく緩急して、しっとりと潤みはじめる。そこへファウストの指がゆったりと埋めこまれていき、ルーチェは口を塞がれたままくぐもった声をあげた。
「ンんっ」
ファウストの指が抜き差しされる度にくぽくぽと厭らしい音が聴こえて、ルーチェは羞恥から涙を滲ませる。
「……厭らしいな。精霊はここが勝手に濡れるのか」
「や……いわないで……っぁ……やぁ!」
いやいやと首を振っていたルーチェは、ファウストの指が一点を擦りあげた途端襲ってきた強烈な感覚に、体を揺らす。
「……あ、ファウスト、だめ……そこやだぁ」
熱い吐息を溢しながら震えるルーチェに目を瞠ると、ファウストは指を増やしてルーチェが強く反応したところを集中的に刺激した。
「ここが気持ちいいんだな?」
「……っんや! や、やあ……っだめ、だめ、イっちゃ……イっちゃうから……っ」
「イっていい。ほら、イけよ」
ぽろぽろと涙を溢れさせながら快感に喘ぐルーチェの頬にキスをすると、ファウストは指の動きを速める。ルーチェは強すぎる刺激に腰を跳ねさせると、ファウストにしがみつきながら前を迸らせた。
「あ……っ、はあ……は……」
指を抜かれると、ルーチェはくったりとファウストに体重を預ける。呼吸を調えるルーチェの髪をファウストが労るように撫でた。
「上手に後ろだけでイけたな……いい子だ」
ルーチェは熱でぽうっとしながらも、ファウストに褒められたことに胸をきゅんと高鳴らせる。
「ファウスト……」
口づけをねだるとファウストはすぐに応えてくれて、ルーチェの唇を優しく甘く吸ってくれる。
そのままファウストはルーチェを支えながら身を起こし、寝台の上に胡座をかくと、その上にルーチェを座らせた。
「ルーチェ」
「……?」
「お前の奥深いところに、俺を受け入れてくれないか」
ひとつになりたい。
酷く熱を帯びた眸で真剣に求められて、ルーチェはぞくりと背中を震わせる。先ほどまでファウストの長い指を受け入れていた場所がひくり、とひくついた。
「……」
ルーチェは羞恥で顔を真っ赤に染めあげながら、ぎこちなく頷く。それから、まだ着衣のままなんの乱れもないファウストの服の裾をひっぱった。
「ファウストも、全部ぬいで?」
ルーチェとファウストの間に遮るものがあることが嫌でそう訴えると、ファウストはあっさりと着ていたものを脱ぎ去り、ふたたびルーチェと向き合う。
「これでいいか?」
「う、ん」
曝け出された肉体に、ルーチェはドキドキと鼓動を速めながら頷いた。ファウストの裸から目を離せずにいるルーチェに小さく笑うと、ファウストはルーチェの腕を軽く引く。
「手はこっちに回して、腰を上げてくれ」
「ん……」
促されるままファウストの首に手を回すと、後孔に濡れた熱いものが押し当てられた。不安になってルーチェが泣きそうになっていると、ファウストが宥めるように口づけをくれる。
そのまま、腰を掴まれてゆっくりとファウストのものの上に沈められた。
「ん……ふぁ……ンっ」
狭い場所がじわじわと押し広げられて、灼熱の杭がルーチェを貫く。指とは比べものにならない質量のものが中を満たしていた。
身を固くして息を詰めていると、ファウストが萎えたルーチェのものに触れ、強ばりを解かすように刺激してくる。それにルーチェのものはすぐに反応すると涙を溢しはじめた。
くちゅくちゅと前を弄られながら腰を揺すぶられる。埋めこまれたファウストのものの存在を強く感じて、ルーチェはきゅうっと中を締めつけた。それに、中のものがぴくりと反応する。
「……っルーチェ、動いても、平気か?」
つらそうに眉根を寄せたファウストに尋ねられて、ルーチェは何度も頷いてみせた。
「へーき……っうごいてファウスト……」
「く……!」
「ひ、あっ」
ルーチェの腰を掴む手に力がこめられたかと思うと、下からの突き上げがはじまる。すっかり濡れそぼり蕩けたルーチェの中は、ファウストのものが前後する度にぱちゅぱちゅと厭らしい水音をたてた。
「あ……っ、あっ、んっ、あっ」
ひと突きごとにルーチェの体が浮いて、重力に引き戻されては自重でファウストのものを奥深くに飲みこむ。最奥を先端で叩かれる度、内壁が悦ぶようにファウストのものに絡みついた。
太く熱いファウストのもので指で弄られたときに感じた場所を何度も刺激され、ルーチェは泣いた。
「ひゃう……っ、あっ、あっ、うっ」
「ルーチェ……気持ちいいか? ここ、こうされるの好きだろ」
「ンんっ、むり……だめっ、そ、んな……したらっ」
「イく?」
腰から下がドロドロに蕩けていた。もう気持ちいいしか分からなくて、ルーチェは泣きながらファウストにしがみついて腰を揺する。
「ん、んっ、イく……っ」
「俺も……もう、イきそうだ……ルーチェっ」
限界を訴えてきたファウストにさらに追いうちをかけられて、ルーチェは二度目の精を解放した。中が痙攣してファウストのものをきゅうきゅうに締めつけると、熱いものを吐き出される。
奥に注がれる感覚に震えながら、ルーチェは全身から力を抜いた。
*****
召喚獣は契約をしていても、必要以外のときは自分の世界で生活するのが常識である。
しかし、ファウストとめでたく恋人同士になったルーチェは、ファウストと離れたくないあまり精霊界には還らずにずっと人間界で過ごしていた。
フィデリオは困ったように眉尻を下げると、獣の姿でファウストの腕に抱かれているルーチェと目線を合わせる。
「ルーチェ。そろそろ精霊界に還った方がいいと思いますよ」
『やだ』
フィデリオに諭されたルーチェは、白くて小さな体をファウストに押しつけるとぷいと顔を背けた。
「あなたの居場所は私から光の方に伝えてはいますが、人間界に来てから、まだ一度も戻ってないでしょう。光のものたちがとても心配していましたよ」
『うー』
みんなが心配していると教えられてルーチェは少し悩んだが、やはりファウストと離れるのが嫌で首を横に振る。
それにこれ以上ルーチェに何を言っても無駄だと悟ったフィデリオは、矛先をファウストに変えた。フィデリオにどうにかしろと睨まれて、ファウストは仕方がないと肩を竦める。
ファウストも本音ではルーチェと離れたくないが、こちらにずっといさせるわけにもいかないことは分かっていた。
「ルーチェ。お前向こうに家族もいるんだろう? またすぐ喚ぶから、一度還ってやれ」
『うう。わかった……』
もう契約をしているのだから離れてもまたすぐに会えるとファウストが説得すると、ルーチェは渋々ながら還ることを受け入れた。
ルーチェが精霊界に還ると、フィデリオは心底安堵したように息を吐く。
「はー良かった。もう少しで怒り狂った光の精霊王が降臨して、人間界に天変地異を起こすところでした」
「は?」
突然物騒なことを言い出したフィデリオに、ファウストが目を剥く。
「あれ? 言ってませんでしたっけ。ルーチェは光の精霊王が溺愛している一番下のお子ですよ」
「光の精霊王の、息子? 嘘だろう……」
「本当です。もう、ルーチェを連れ戻すために人間界に乗りこもうと息巻いているあの方とご兄弟を宥めるの、大変だったんですからね!」
ぷんぷんしながら文句を口にするフィデリオに、ファウストは冷や汗を流しながら頭を抱えた。
「いや、けどあいつおっそろしく弱いぞ……?」
「ルーチェは容姿以外に特出したところはありませんが、高位の精霊で間違いありませんよ。あなたが召喚したことがその証明です」
確かにあの時、ファウストは光の高位の精霊を召喚していた。それでやってきたのがルーチェだ。ということはつまり、ファウストの召喚は失敗したのではなかったのか。
そんな馬鹿な話があるのかと頭痛がしてきたが、高位の精霊であるフィデリオが言うのだから事実なのだろう。
それから数日後、ふたたび召喚したルーチェと一緒に今度は光の精霊王という大きなおまけがついてくるのだが、このときのファウストはまだ知らぬ話である。
おわり
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