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第3話
オメガ特有の発情は、身体に大きな負担を強いる。
一週間ほどは絶えず濃厚なフェロモンをまき散らすし、性的な興奮状態に陥って誰彼かまわず、そして場所も選ばず生殖行為をしたくてたまらなくなる。だからその間は抑制剤を飲んだり、遮香室に入ったりしてすごさねばならない。
陽斗と光斗は双子の兄弟で、両者ともオメガだ。家族のいないふたりきりの身の上であり、今は祖父母の残した古い一軒家でつつましく暮らしている。
光斗が何もいらないというので、真っ直ぐ帰宅することにして、駅前ロータリーを抜けて歩いていく。十月も終わりにさしかかり夜風が冷たい。肩をすくませて歩いていると、歩道の先に家族連れがいることに気がついた。
二十代に見える男性ふたりと、四人の子供が仲よさそうに話しながら歩いている。多分、男性アルファと男性オメガの夫々なのだろう。同性婚もバース性が絡めば珍しくはない。
「ねえパパ、今日の夕ご飯なに?」
「夕ご飯は、おでんと唐揚げだよ」
「やったあ! おでん大好き。たまご、入ってる?」
「もちろんだよ」
「俺は唐揚げ好き。嬉しいな」
「今日あたし、先生にほめられたのよ」
「本当に? すごいねぇ」
微笑ましい会話に、陽斗の頬も自然とほころんだ。
男でも妊娠可能なオメガは総じて繁殖力が強く、ひとりで複数人の子供を産むのは当たり前だ。そのためこの少子化のご時世では重宝されている。保護法で医療面や最低限の生活が守られ、政府公認のマッチング会社で番となる結婚相手も斡旋してもらえる。
けれどこの法制度のせいで、オメガの自立はある意味阻まれていた。仕事なんかせずに、早く家庭に入って家事育児に専念しろというのが、世間の風潮になっている。
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