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第24話
「弟は、俺より大変なんだ。不自由な生活を強いられてるし、体調管理も面倒だし。俺はまだ動けるから、そこんとこは支えてやらないと」
「なるほど。僕は兄弟がいないからその感覚はよくわからないけど、君にそれだけ大切にされているのは羨ましいね」
高梨は陽斗が弟を気にかけているのを知って、わずかに苦く微笑んだ。
「あんたは、大切な人はいないの? 家族とかの」
「いないよ。僕は家族はない」
ふと、瞳を伏せるようにして告白する。その顔つきからさっきまでの明るさが消えていく。陽斗はまずいことをきいてしまったのかと狼狽えた。しかし聡い高梨は、陽斗の小さな変化にも敏感に反応した。
「ああ、ごめん。気にしないで。君を困らせるつもりはない。僕はひとりの生活には慣れている」
そうは言っても、孤独に慣れることのできる人間などいるのだろうか。レア・アルファはそこのところは一般人とは違うのか。
「もう一杯どう?」
「ああ、じゃあ」
勧められて、陽斗は同じものを注文した。口あたりがよくて芳醇な香りのウイスキーに、いつの間にかほろ酔い状態になる。
「あんたの話も教えてよ」
陽斗はなめらかになった舌で、そう話していた。
「俺のこと、一杯、調べて知ってんだろ。俺はあんたのこと何も知らない。レア・アルファってどんな人種なのか、知りたいな」
「僕に興味が出てきた?」
優しげな表情に戻って高梨が言う。陽斗は相手を機嫌のいいままにしたくて「うん」と頷いた。
結局自分は、この男に惹かれ始めている。だから会話するこの時間を心地よく感じ、長引かせてもいいと思っている。相手にもそれが伝わっているのだろう。高梨は静かに話し出した。
「レア・アルファの定義は知っているかい?」
「ああ、まあ、世間一般に言われている程度は」
あいまいに答えると、高梨は魅惑的な目を細めた。
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