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第137話 *
「なんでダメなの?」
「だ、だって、お前は、……弟、だろ」
「オレ、陽斗だったらいいよ」
「俺はイヤだ」
頬を紅潮させた光斗が、悲しげな顔になる。
「陽斗は潔癖症だもんね」
「ええ……」
そんな風に自分のことを思ったことはなかったので、驚いてしまう。
「そんなとこも、オレと違ってて、羨ましかった」
「光斗」
「オレだって、こんな淫乱になりたかったわけじゃないんだよ」
涙をにじませた弟を見て、彼には彼なりのコンプレックスがあったのかと気づかされる。
「……ごめんな、俺、お前のこと、何にもわかってなかった」
「いいよ。陽斗、大好き」
「けど、光斗、明日には津久井さんがくる。そうすればお前は誰よりも幸せになれる。――だから、つらいだろうけど」
言葉をとめて弟をじっと見つめた。
「今は我慢するんだ。俺は絶対に、お前には挿れない。発情期のお前に挿れたら、オメガの俺だってお前を孕ませるかもしれないから」
「……ん」
光斗が泣きそうな顔で頷く。
「わかった……ごめ。ごめんね」
「その代わり、一杯扱いてやるよ」
「うん。それで我慢する」
頼り切った目で兄を見あげる弟の姿は、昔から変わらない。
可哀想なオメガ。けど何より大切なオメガ。だから、どうしても無垢なまま助けてやりたい。
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