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【第3話】設定18℃にしていそしむこと(1)

「あっつい……」  伸びてきた手を有夏はピシャリと払った。  ベッドに横向けで転がり、寝る前のひとときをPSvitaに興じていた彼の背に、ピタリと張り付くように幾ヶ瀬の身体が寄せられる。  風呂上がりの熱気がむわっと押し寄せてきて、有夏は露骨に顔をしかめた。  体温が低く線も細い彼に比べて、幾ヶ瀬の熱は耐えがたいものであるらしい。 「キモいいくせ、あっち行け。てか、邪魔すんな」 「オレのタァァーン、ドロォー! モンスターを召喚ッ、更に魔法カード・融合発動ッ!! 融合召喚、出でよッ! 剣闘獣!ネロキウスっ! モンスターを装備魔法で強化ァッ!」  2週間近くやり込んで、強化に強化を重ねたこのデッキに死角はない。 「何やってんの。何がオレのターンなの。いつもみたいに有夏って言いなよ」 「うっせ」 「何時間やってんの」 「うざ。」 「有夏ぁ?」  生返事でゲームを進める有夏だが、幾ヶ瀬はこういう時しつこい。 「有夏の耳、後ろから見てもかわい……」 「うるせっての。暑い。ジャマ。うざい。バカ」  かわいい有夏の言葉とはいえ、幾ヶ瀬の頬が若干引きつった。 「有夏、え……本当に?」  何もしないでこのまま寝るのかという意味である。  隣りの角部屋──有夏の部屋は悲しいかな、ゴミ屋敷と化していて。  暑いと喚きながらも、彼は当然といった顔で幾ヶ瀬の家に居座ってベッドを占領している。  その態度たるや、部屋の主たる幾ヶ瀬の方が「ごめん」と断って上がらなければならないくらいに。  狭いシングルサイズの寝台に男二人が横たわれば、触れるなという方が無理な話。  壁側を向いた有夏のTシャツの裾からのぞく白い背を眩しそうに眺め、幾ヶ瀬の指は無意識にそこに伸びた。 「うあぁッ、気持ち悪っ!」 「気持ち悪……!?」 「何だよ。触んなって。暑っついから!」  ごめんと宥めるように幾ヶ瀬は身体を離す。

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