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【第3話】設定18℃にしていそしむこと(3)

 僅か10分後。 「ね、ちょっと寒くね?」  上布団を胸元まで引き上げ、有夏がチラリ。  背後を見やる。  風向きを固定されているのか、冷気はずっとベッドに強く吹き付けられたままだ。  無意識の動きだったのだろう。  有夏の身体もぬくもりを求めてジリジリと幾ヶ瀬の方ににじり寄っていた。 「ん? 俺は風呂上がりだし別に寒くないけど」 「何度設定? 風つめたすぎ。幾ヶ瀬、リモコンかして」 「何? ああ、リモコン?」  たっぷり一呼吸の間をおいて、幾ヶ瀬が続ける。 「隠したよ。別の所」 「は?」 「有夏がどうしてもって頼むんなら、俺があたためてあげてもいいんだけど」 「………………」  明らかにムッとした表情で有夏が上体を起こす。  きょろきょろと周囲に視線を走らせるが、目につくところにリモコンがある筈もなく。 「さむ……」  元来、探すやら片付けるやら整理するやらが極端に苦手な有夏のこと。  ベッドから降りて家探しする気も起きないようで。  それどころかあまりの寒さに布団から出られないありさま。 「ほら、おいでよ。有夏」 「ど、いう誘い方だよっ!」  差し出された手を有夏は今夜一番強く叩いた。 「幾ヶ瀬、ちっとも地球にやさしくない」 「だってそもそも有夏が……。いや、いいよ。俺は有夏にだけ優しいんだから」  意地の悪い笑みを向けられ、有夏は視線を逸らす。

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