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【第5話】中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる(4)
「だから、そういう遊びだって。たまには面白いでしょ。有夏だって変わったことしたいって言ってたじゃない」
「……変わったことしたいなんて言ってない」
有夏の苦情を軽く無視して、幾ヶ瀬は続ける。
「どうせなら夢のイタリアを舞台にしようよ!」
べつに有夏はそんな夢持ってないという反論は、もう幾ヶ瀬の耳には入っていないようだ。
「ルネッサンス末期のイタリアの男娼専門の売春宿で、客層はそこそこの金持ちって感じ。とんでもなく高級な所ってわけじゃないけど、庶民が行けるようなレベルでもないと」
「キモ……」
何だか設定に凝りだした。
「有夏、名前はどうする?」
「なまえ?」
「ほらぁ、源氏名っていうの? ヨーロッパっぽい名前考えてよ」
「何で有夏が……。じゃあ、メッシ」
「……めっし? サッカーの? え? 今頃?」
「うん、メッシ」
「そ、そう……」
アルゼンチンの選手だし、第一「メッシ」は苗字だ。
「……有夏がアホなのを忘れてたな」
「は?」
小さな声を聞き咎めて有夏が口をとがらせる。
「うん、アリカでいいか」
ノリに乗ってる幾ヶ瀬、勝手に命名した。
「アリカは男娼専門の娼館の売れっ子ね」
「う、うん?」
イタリアとか客層がとか言い出したあたりから、有夏は呑まれてしまっているようで。
うわ言のように「キモイキモイ」言いながらも、素直に頷いている。
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