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【第5話】中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる(5)
「俺はアリカの初めての客」
「は? おかしくね? 初めてなのにNo.1なんて」
幾ヶ瀬のドリームがキモすぎるとごちながらも、有夏、これは意見を出してきたと言えるだろうか。
「や、違うって。今やアリカはこの地区の高値の華って感じの男娼で、ちょっとやそっとじゃ抱けないくらいの存在になってて……」
「この地区って、このアパート? プラザ中崎の?」
「有夏ぁ―っ!? 一気に現実もってこないでーっ!? イタリアだよー、ここは13世紀後半のイタリア地方都市。その一角にある夜の街。ブラザ中崎なんて言わないでよ。アリカは美人でかわいくてカラダも最高の売れっ子……」
「ちょ、ゴメン。これだけ言いたい」
「何、有夏?」
「幾ヶ瀬、キッモ!」
少々構えていただけに幾ヶ瀬、ガクッと肩を落とす。
「No.1はキモイキモイ言わないの!」
幾ヶ瀬が更に声を張り上げる。
「俺はアリカの処女を奪った初めての客ってことで。ここまでいいね?」
「ショ……何言って……キッ、ううっ」
キモイとの叫びを、今回はどうにか堪えたようだ。
「けどさ、風俗とかって最初は店長が研修がてらヤるんじゃないの?」
「やめてくれ、有夏! いや、そうかもしれないけど……知らないけど。でもアリカは処女だから、上客の俺に回そうと配慮されたって話で」
「キッ………………」
幾ヶ瀬の熱気に圧倒されるように有夏、じりじりと身を引いている。
「……幾ヶ瀬、上客なんだ。てことは有夏が入ってくる前から通いつめてるんだ。うわぁ」
「頼むよ、有夏。ちょっとだけ。アリカ、アリカ……昨夜はどうしていたんだい。他の男に抱かれてしまったのかい」
有夏──いや、アリカの手を取り細い指先に舌先を這わせる幾ヶ瀬。
「ちょ……もう入ってんの? やめろって。お客さーん、キモすぎなんですけどー?」
有夏ァッ! 幾ヶ瀬が怒鳴る。
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