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【第7話】カラフル(1)

 早朝の風が木の葉をくすぐる。  もう数時間すると、熱せられたアスファルトからの照り返しで目も開けられないほどの暑さになろうことは想像できた。  しかし、肌に触れる空気はひやりとしていて、まだ夜が明けて間もないことを示している。    小さな2階建てアパートの上階の廊下。  4つ並んだドアの、それは端から2つ目であった。  蝉の声が止むと、漏れてくる低い声が聞こえる。  出かけようと扉を開けたり、思い直して閉めたり。  そういった動作を繰り返している様子が窺えた。  時折見える扉の隙間には2人の人影。  早朝、であるにも関わらず声をひそめるでもない様子だ。  玄関先でイチャついている──かのように見えるが、これは少々違うようだ。 「有夏、2日分のキス」 「も、いいから! とっとと行けって」  玄関の取っ手に手をかけたり放したり。  靴を履いたり脱いだりしているのは、二十歳もそこそこの長身の男。  ワイシャツにチノパンという格好で、足元にはボストンバックが置かれていた。 「やっぱり俺、寂しい。離れたくないよ」

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