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【第7話】カラフル(7)

 ゲームから流れる音楽、コップの中で氷が立てる小さな音。それからエアコンの運転音。遠くでは蝉の鳴き声。  幾ヶ瀬が新幹線と在来線を乗り継いで──3時間ほどかかると言っていたっけ──そろそろ目的の店へ到着した頃であろうか。  ちらりと置時計を見て、有夏はコントローラーを置いた。 「目痛ぇ……」  そろそろ昼メシにするかと、テレビの裏に隠していたカップメンを取り出す。  過剰に食生活に干渉してくる幾ヶ瀬の手前、普段は決して食べられないものだ。  昼は作り置きしているシチューだか何だかを温め直して食べるよう言われた気もするが、そんなことはいちいち考えない。 「はぁ、至福……」  ズズズ……と塩分の濃いスープを飲みほしてから、有夏はコロリとその場に横になった。  腹が膨れたせいか、早起きしたこともあって睡魔が押し寄せる。 「今頃ヤツはこき使われてるんだろな。ざまぁ…」  トロリと重くなる瞼。  近くにあるレストランの厨房手伝いとホールを担当している彼の恋人だが、こうやって出張が入るのは初めてのことだった。  何やかやと抵抗していたものの、結局は仕事が好きなのだろう。  ゆうべ楽しそうに荷造りする様子に、有夏は声をかけるタイミングを失してしまったことを思い出す。  ──そういや高校のときも弁当つくってくれてたっけ。  クラスが違うのにいきなり弁当を差し出されたのが、幾ヶ瀬との出会いだ。  彼に下心があったのかどうか。  よく言えばのんき、悪く言えばアホの子の有夏は、毎日のように無自覚に弁当を受け取ったものだ。

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