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【第7話】カラフル(17)
「………………」
「そ、それはともかく、既読すらつかないから心配したのはほんとだよ!」
さすがに咎める口調だが、有夏に通じる由もない。
可愛らしく小首をかしげてから、とんでもない一言を放った。
「有夏、自分のスマホ……実はもう何か月も見てない」
「え?」
「有夏の部屋のどこにある……はず」
チラと自分の部屋の方向に視線を走らせる。
隣室の角部屋は例によってゴミ屋敷だ。
小さなスマホはどこに埋もれているやら。
当然、充電も切れていよう。
「あの中から探せと……。え、俺が? あっ、俺が探すんだ……。どうりで毎日帰る時メッセ送ってるのに反応がないわけだ」
「は? あの距離でいちいち帰る連絡とかキ……」
キモいんだけどと言いかけて有夏、言葉を噤む。
代わりにごめんと呟いた。
「でも幾ヶ瀬が帰って来てくれて嬉しいよ。1人じゃ寒かったから」
幾ヶ瀬の胸に頭を凭せかける。
「有夏……?」
戸惑ったような声。
有夏のいつになく素直な振る舞いに面食らっているのが分かる。
「ま、またエアコン強くしすぎてたんじゃないの。勿体ないじゃない。風邪ひいたら……」
幾ヶ瀬の手が、有夏の肩に触れるか触れないかのところをうろうろさ迷っている。
その手の気配を感じたか、有夏が低く笑う。
「さっき花火してたんだけど。知ってた?」
「あ、あーそっか。今日だったんだ」
「有夏、1人で見たし。つまんねぇし」
「あ、見たんだ! ベランダから? ちょっとだけ見えるでしょ。ビルの隙間から」
うん、ちょっとだけねと呟いて有夏はもたれていた頭をずらして、幾ヶ瀬の胸に顔を埋める。
「けっこうキレ。カラフルで。来年は一緒にみよ」
「え……何? それ何かのフラグ? 俺死ぬの?」
明らかにうろたえる幾ヶ瀬を有夏が睨む。
「フラグも何もないよ。来年、一緒に見ようって言ってるだけ!」
たっぷり2呼吸の間、幾ヶ瀬は固まっていた。
ゆっくりと息を吐くと、無言で頷く。
それから有夏を抱きしめた。
「カラフル」完
8「ヘンタイメガネの変態たる所以」につづく
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