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【第10話】夏のなごり(1)
冷凍庫を開けた有夏がアイスを取り出した。
顔がニヤけている。
「鍋のあとはやっぱコレだな」
コンビニの「まるでマンゴーを冷凍したような食感のアイスバー」をペロリと舐める。
「うまーーーっ!」
この時期、鍋とは大概に季節外れなメニューである。
だが有夏が喜んで食べることと、何より調理が楽なことから、幾ヶ瀬家ではここ数日またもや鍋料理続きであった。
塩ちゃんこに始まり、うどんすき、カレー鍋……。
最初の2日は食後に「アイスがない!」と嘆いていた有夏だが、3日目にして自ら買っておいたようだった。
「俺の分は?」
食器を片しながら、幾ヶ瀬。
「あっ……」
有夏がしまったと顔をしかめた。
ないんだぁ、と恨みがましい口調で幾ヶ瀬がアイスを眺める。
自分の分しか買っていないのは意地悪ではなく、有夏が天然なだけだと分かっているから、目元は勿論笑っている。
「んじゃ、一口食べ」
差し出そうとするのを手を振って止める。
「いいよ、いいよ。じゃあさ、有夏。罰としてそのアイスをいやらしく舐めてみようか」
「その発想、お前はホントに気持ち悪いな……って喜んでんじゃねぇよ」
「ふふ……有夏にそう言われたらゾクッとクル」
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