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【第14話】有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(3)

 座卓を顎でしゃくる。  相当苛立っているようだ。  有夏は気まずそうに「いただきます」と手を合わせ、箸をとった。  まずは牛肉の野菜巻きからと箸を伸ばしかけたところで、幾ヶ瀬が嗚咽をあげる。 「牛肉がセールだったから、この前の休みに買い込んだんだよ? 冷凍しときゃ1ヶ月はもつと思って。国産だよ! セールといえど、全部でいくらしたと思う!?」 「知らねぇよ。故障だったら、しゃあねぇじゃん」 「いくらで買ったか言ってよーッ!」  迫力に呑まれて有夏が口ごもる。 「さ、さんぜんえん?」 「馬鹿っ! そんなわけないでしょ。国産だよ? トータル1万円しましたよ!」  アァーッ、イチマンエンッと叫んで顔を覆う。  よく見れば泣いているわけではない。  涙も出ないくらいショックを受けているようだ。

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