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【第14話】有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(5)
「なんで!? 最初はちゃんとあったでしょ。まさかまたゴミに埋もれて……」
「ちがうっ! こないだ片づけたばっかじゃねぇか。そんなすぐ散らかさんわ」
「いや、有夏ならありうる。有夏ならやりかねない」
「おま……」
幾ヶ瀬を一睨みする有夏。
冷蔵庫ショックのあまり少々おかしくなっているのだと、暴言は水に流す。
「うちの実家で20年使ってるやつが、冷凍部分だけ壊れたんだと。去年だっけな……麗華姉が来てかついで帰った。有夏のアイスが入ってたのに、問答無用ってかんじで奪われた」
「何だ、そうか……担いで? え?」
急に我に返ったらしい幾ヶ瀬が眼鏡を外して瞬きを繰り返す。
「麗華姉、柔道の師範だから。修行とかそういうの、ムヤミに大好きだから」
「へ、へぇ……」
「元々あの部屋、響華姉が男と住むって借りた部屋だし。家具だって有夏は1円も出してないし」
「へぇ……」
「持ってかれてもしゃあねぇわ。有夏はとにかく逆らえない」
「へ、へぇ……」
姉弟の中での有夏のヒエラルキーの低さは幾ヶ瀬も承知している。
仕方のないことだと妙に納得したようだ。
「で、でも麗華お姉さん? 1番上の? 柔道してるって意外だね。六華姉妹ってモデルでもしてそうなイメージなんだけど」
「あ、一番下の百華姉が……」
「ええっ、まさかモデルをっ?」
突如、幾ヶ瀬が色めき立つ。
自分で発した「モデル」という言葉に、フンスと鼻息を荒くした。
この男、得てしてこういうところがあるのだ。
「いや、地下アイドルのおっかけしてる」
「……ああ、地下アイドルじゃなくて、おっかけの方なんだ」
……どうやら興が冷めたらしい。
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